フジ(8278・イオン系小売)3つの看板を、一枚の床に——統合途上の答え合わせ|1〜3階で読む2026年2月期本決算【日本株シリーズ第19回】【2026年8月更新】

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📝 更新情報

  • 2026年8月27日更新:2027年2月期第1四半期を反映(評価:弱いマイナス)。軸は2026年2月期本決算のまま。 → 該当箇所

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はじめに——売出人リストに、私の持ち株がいた

リストの1行に目を留める株主のイラスト

第16回の、続きの話

第16回のイオン九州の回で、事業法人等8社がイオン九州株180万株を売り出した開示を扱った。その売出人リストに「株式会社フジ 525,300株」の名前がある。フジは、私の持ち株である。イオン九州も、私の持ち株である。私の持ち株が、私の別の持ち株の株を全部売っていた——コンプ勢にだけ見える、この妙な光景がこの回の入口だ。

うちはイオン九州・イオン北海道・マックスバリュ東海・フジと、同じ網で使える優待券を出すイオン系各社の株を「コンプ」している。その4社を1枚で比べた横断比較(第20回)もある。フジの優待は年1回・選択制で、うちはAコースの優待券6,000円分(100株)をもらう立場だ。8月末基準の長期優待では新米もくれる。

保有歴を先に開示しておく。私はもともとマックスバリュ西日本(8287)の株主だった。2020年のコロナ禍に資産保全でいったん手放し(第5回で公開した売却リストにMV西日本の名前がある)、2021年1月に買い戻した。そして2022年3月、フジとMV西日本の株式交換——比率は1対1——で、MV西日本株はそのままフジ株になった。だから私は、フジの店で買い物をしたことより先に、株主になった。取得単価・損益は書かない。

売る側に回った統合途上の会社は、いま何をしている最中なのか。それを一次開示で確かめる。

1〜3階で何を見るか

日本株シリーズは、企業を1階・2階・3階で読む。1階=安定基盤、2階=成長エンジン、3階=将来オプションである。2階は「新規事業」一般ではない。1階の成長が鈍った・斜陽化したときに代わりに立てる対抗馬である。置く階はいずれもであり、会社の報告セグメントそのものではない。本シリーズでは8278を、イオン系4社で唯一の類型「統合途上」に置く。親の議決権が4社で最も薄い51.49%、4社で唯一のプライム上場、そして統合のシナジーはこれから、という会社だ。

なお、名前の似た放送局の会社(フジ・メディア・ホールディングス)とは別会社である。本稿の株式会社フジ(8278)は、中国・四国エリア及び兵庫県で店舗を展開する総合小売業だ(短信逐語)。

先に着地

事業の側。2026年2月期は営業収益8,142億円・営業利益112.2億円で、営業利益は2期連続の2桁減益。減損損失118.80億円を計上した。純利益は+114.1%と倍増したが、段階で分けると税引前の増益は6.7億円にすぎず、純増益の最大要因は税負担の減少である。1階は、フジ・マックスバリュ・マルナカの3つの看板を一枚の床にしている途中の小売業。2階は置けない。3階は空きである。

資本の側。この会社は2025年度、グループ内の持ち株を大きく現金化した。イオン九州株の全部売却と、持分法適用関連会社レデイ薬局の全株譲渡である。同じ年度に借入金は257.48億円減った——ただし売却代金と返済の資金対応は開示になく、本稿はつながない。2026年3月からシステム統合が始まり、会社は2027年2月期に営業利益+51.5%を予想する。統合の答え合わせは、次の決算に来る。

会社の輪郭——8,142億円・単一セグメント・唯一のプライム

瀬戸内海をはさんで両岸に店舗が並ぶようすのイラスト

本決算の数字

2026年2月期 決算短信(開示 2026-04-07・連結)の数字は次のとおりである(単位: 百万円。期間は2025年3月1日〜2026年2月28日)。

項目2026/2期2025/2期増減率
営業収益814,260808,928+0.7%
営業利益11,21712,953△13.4%
経常利益12,52714,315△12.5%
親会社株主帰属当期純利益8,1763,818+114.1%

4社の中での位置

ROEは3.7%、自己資本比率は54.7%。営業収益営業利益率は1.38%(概数1.4%)。同じ営業収益分母でそろえた筆者計算では、イオン系上場4社で最も低い(マックスバリュ東海3.52%・イオン北海道2.06%・イオン九州1.96%・フジ1.38%。原数値は各社の2026年2月期決算短信)。規模は4社で最も大きく、率は最も薄い、という並びだ。報告セグメントは単一。親会社イオンの議決権は51.49%支配株主等に関する事項)で、イオン九州70.18%・イオン北海道67.23%・マックスバリュ東海64.55%と並べると4社で最も薄い。上場市場も4社で唯一のプライムである。

大きい・薄い・親の握りが浅い。この3点が、この会社の輪郭である。

統合の時系列——二つの系譜が、一つの会社へ

二つの源流が合流して一つの流れになるイラスト

松山のフジと、高松のマルナカ

いまのフジには、二つの系譜が流れ込んでいる。

一つは松山のフジ。会社公式の沿革によれば、1967年、繊維卸の十和株式会社の全額出資で愛媛県松山市に設立され、同年10月に宇和島市で1号店を開いた。ちなみに出資母体の十和の現在の姿は、ジュエリーのヨンドシーホールディングスである——繊維卸から出発した系譜が、片や中国・四国・兵庫の小売へ、片や宝飾へ分かれていった。

もう一つは高松のマルナカ。青果問屋を祖とするとされる)(二次情報)香川のスーパーで、2011年、イオンが中山一族からマルナカの発行済株式94.96%を総額364億円、山陽マルナカの全株式を総額85億円で取得して子会社化した(取得価額の合計は450.33億円)。マルナカと山陽マルナカはその後、2021年にマックスバリュ西日本に吸収合併されている。

2018年から2024年——法的な統合

フジとイオンの関係は、2018年10月の資本業務提携で始まる。2021年9月に経営統合の基本合意、2021年12月に株式交換契約——MV西日本の普通株式1株に対して、フジの普通株式1株を割当交付(逐語)——を締結し、2022年3月1日にフジは持株会社となり、イオンの連結子会社になった。私のMV西日本株がフジ株に変わったのは、この日である。

そして2023年11月22日、吸収合併契約を締結。2024年3月1日、フジを存続会社として、事業子会社のフジ・リテイリングとマックスバリュ西日本を吸収合併した。合併後の状況は開示の逐語でこうだ——名称は株式会社フジ、本社所在地は広島県広島市南区段原南本店所在地は愛媛県松山市宮西

社名は、フジのまま

九州はイオン九州、北海道はイオン北海道になったのに、なぜこの会社だけ「イオン四国」でも「マックスバリュ四国」でもないのか。開示から言える事実は2つある。第一に、商圏が四国に収まっていない——短信の逐語は「中国・四国エリア及び兵庫県において店舗による事業展開」であり、本社は広島市にある。第二に、統合の法的な器が一貫してフジだった——株式交換ではフジが完全親会社になり、吸収合併ではフジが存続会社になった。消えたのはマックスバリュ西日本という社名の側である。それ以上の動機の説明は、開示にはない。

1階——3つの看板を、一枚の床に

3つの建物が一枚の床でつながっていく工事のイラスト

短信の注記に、この会社のいまが凝縮された一文がある——「Fはフジ、MVはマックスバリュ、Mはマルナカ、DSはディスカウントストアの略です」(逐語)。決算資料の店舗一覧が、3つの屋号の略号を必要とする。それが統合途上ということだ。

会計の事実と、統合の施策

会計の事実と、統合の施策は分けて置く。会計の側は、営業利益が2期連続の2桁減益で、減損損失118.80億円(営業利益112.2億円を上回る規模の評価損。内訳の明細は本決算資料の範囲では開示されていない)。有形固定資産は約110億円減少した。施策の側は、既存店の活性化37店、スクラップ&ビルド3店、新店2店、電子棚札累計210店・セルフレジ累計379店——そして2026年3月から始まる基幹システムの統合である。業態別の売上前年比はスーパーマーケット+0.6%、ディスカウントストア+2.3%と、床自体は静かに動いている。

移動スーパーという届け方

1階の中で目を引くのが移動スーパーだ。当期は7店舗で新規運行を始め、累計94店舗・車両146台・798ルート、売上は前期比+8.0%。中国・四国の過疎地や島しょ部へ、店のほうから出向いていく。届け方の拡張であって別の商売ではないから、シリーズの言葉では1階の中の動きである。だが、統合で一枚になっていく床の端が、車輪をつけて伸びている絵は、この会社の商圏の地形をよく表している。

2階は置けない。別商売の候補が一次に見当たらず(フジネットショップは販路である)、統合途上の会社は、まず1階を一枚にする段階だ。3階も空きである——未収益で、かつ既存事業の延長でない種は一次に見当たらない。空きは減点ではない。

売る側の開示と、+114%の中身

手放した風船と沈む建物模型が釣り合う天秤のイラスト

兄弟の株を、全部売った

2025年10月31日、フジはイオン九州株525,300株の全部を売却する開示を出した。理由の逐語は「資産の効率化及び財務体質の強化」。11月11日の開示で、売却総額14.21億円(1株2,705.60円)、売却益12.73億円をQ3に特別利益計上と確定した。第16回で発行会社の側から見た売出を、この回は売出人の側から見ている。

そしてもう一つ、より大きな売却があった。持分法適用関連会社だったレデイ薬局の全保有株式の譲渡である。連結で投資有価証券売却益81.89億円2026年1月8日の経過開示)——当期の投資有価証券売却益103.74億円のうち、約8割がレデイ薬局で、イオン九州株は約12%。残る約9.12億円の対象は、確認した一次資料では特定できない。ドラッグストアという持分の窓を手放し、グループ内の持ち株を現金に換えた年度だった。

段階で分ける

純利益+114.1%の中身を、損益計算書の段階で分ける(億円・カッコ内は前期)。

段階2026/2期2025/2期
営業利益112.17129.53
経常利益125.27143.15
特別利益104.963.67
特別損失148.7372.06
税引前利益81.5074.77
法人税等合計△0.2836.45
親会社株主帰属純利益81.7638.18

特別利益が101億円増えた一方で、減損を中心に特別損失も77億円増え、税引前の増益は6.7億円にとどまる。純利益を+43.6億円押し上げた最大の要因は、法人税等合計が36.45億円から△0.28億円へ動いたこと——短信の逐語では「減損損失の計上による法人税等調整額の減少」である。この表を見たうえでの筆者の要約として言えば、+114%は営業の力ではない。会計の構造がつくった数字だ。

同じ年度の別の事実として、借入金は257.48億円減った(短期39.50億円+長期217.98億円)。売却代金がどこに充てられたのかという資金の対応関係は、開示には書かれていない。並んだ事実を並んだまま置く。

次期の見取り図——+51.5%の答え合わせ

来年のカレンダーと配線がつながる2台のコンピュータのイラスト

会社予想と、中計という物差し

2027年2月期の会社予想は、営業収益8,250億円(+1.3%)、営業利益170億円(+51.5%)、経常利益172億円、純利益70億円(△14.4%)。会社が挙げる根拠は、2026年3月から順次始まるシステム統合(顧客・購買データの一元管理、重複業務の削減)に加え、営業力の強化、既存店活性化、コスト構造改革などの複数施策である。一つの施策に帰属させる内訳は開示されていない。

物差しも一次にある。中期経営計画2024-2026は最終年度(2027年2月期)に営業収益8,450億円・営業利益160億円(利益率2.0%)・当期利益92億円・ROE4.1%を掲げ、2030年度には営業収益1兆円の絵を描く。営業利益の会社予想170億円は、中計目標の160億円を上回る水準だ——達成できるかどうかは、次の決算で答え合わせになる。本稿は予想を前提にしない。数字を並べて、来年ここに戻ってくるための目印を置くだけである。

配当と優待

配当は年30円(配当性向31.8%)、2027年2月期予想も30円。優待は年1回・2月末、3コースの選択制——A=フジで使える優待券(100株で6,000円分)、B=ネットショップポイント、C=地域特産品。8月末基準の長期優待(300株以上・1年以上)では新米が届く。100株・年間の額面では、九州10,000円相当に次ぐ4社2位の厚さを、統合の間も動かさずに続けている。

おわりに——持ち続けるかの判断材料

海を眺めながら来年の手帳を開く人のイラスト

持ち続けている。売る予定もない。ただ、この回で確かめたことは書いておく。

この会社はまだ統合の途中である。3つの看板が一枚の床に揃う工事のさなかに、営業利益は2期続けて2桁減り、118.80億円の減損を計上した。純利益の+114%は、段階で分ければ税負担の減少がつくった数字で、営業の回復ではない。一方で、同じ年度には、グループ内の持ち株の現金化と、借入金257億円の減少が別々の事実として並ぶ——両者の資金対応は開示されていない。そして2026年3月、システム統合が始まる。会社の予想は営業+51.5%——中計の目標を上回る強気の数字であり、その当否は2027年2月期に判定できる。

私の持ち株は、マックスバリュ西日本として買い戻した100株が、1対1の交換でフジの100株になったものだ。売出人リストで自分の持ち株同士がすれ違うのを眺め、統合の設計図と減損の跡を一次で確かめた。来年の答え合わせの回で、営業利益の欄に何が並ぶか。目印は置いた。それがこの第19回である。

※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

【2026年8月27日更新】2027年2月期第1四半期

本稿の軸は2026年2月期本決算のままである。本文は「統合の答え合わせは、次の決算に来る」と書いた。その決算(2027年2月期第1四半期、開示2026年7月9日、期間2026年3月1日〜5月31日)は、すでに出ていた。

評価:弱いマイナス。 営業利益 391(△79.4%)、親会社帰属 66(△94.2%)。通期予想(営業利益 17,000・+51.5%)と配当は修正なし。会社から達成の見通しは出ていない。2階を置けない判断は動かない。

数字の答え合わせ

(単位: 百万円)営業収益 198,026(前年同期比 △1.7%)、営業利益 391(△79.4%)、経常利益 508(△78.2%)、親会社株主に帰属する四半期純利益 66(△94.2%)。以下の増減額・差額は筆者計算。営業総利益は △2,752、販管費は △1,243(−2.1%)。営業減益 △1,508 は、荒利の減少を販管費削減が埋めきれなかった形。経常の悪化 △1,821 のうち、営業外純額 △313 の大半は持分法による投資利益 307→0。通期予想(営業収益 825,000/営業利益 17,000/経常利益 17,200/親会社帰属 7,000)と配当年30円は修正なし。連結範囲の重要な変更は無。短信は、改装を「8店舗を計画通り実施」し、「改装店舗売上高前年同期比4.6%増」と記す。

いまの読み

会社の減益説明は、農産の特需反動減と、「商品調達コスト上昇と“安さ”訴求による荒利益率低下」。持分法投資利益がゼロになった理由は短信に無い。本文が扱ったレデイ薬局の譲渡と時期は前後するが、因果は書かない。Q1の営業利益進捗は 391÷17,000=2.3%(前年同期は 1,899÷11,217=16.9%、いずれも筆者計算)。第1四半期は通期寄与が小さい期でもあるので、進捗率だけで結論は引かない。システム統合の影響額は会社が出していない。

一次: 2027年2月期第1四半期決算短信同・決算補足資料

FAQ——フジを5問で確認

フジ(8278)の株主優待は何が選べるか。

年1回・2月末の株主名簿に100株以上で、3コースの選択制。Aコースはフジ・マックスバリュ・マルナカなどグループの売場で使える優待券(100株で6,000円分)、Bコースはフジネットショップのポイント、Cコースは地域特産品。別に8月末基準の長期優待(300株以上を1年以上)があり、新米(300株で2kg、500株で5kg)が届く。優待券はイオン九州・イオン北海道・マックスバリュ東海など同じ型の優待券を出す各社の直営売場でも使える。

フジテレビのフジと関係があるのか。

別会社である。株式会社フジ(8278)は、中国・四国エリア及び兵庫県で店舗を展開するイオン系の総合小売業(本社・広島市/本店・松山市)で、放送局のフジ・メディア・ホールディングスとは別の会社である。

なぜ純利益が倍増したのか。

段階で分けると、税引前利益の増加は6.7億円にとどまる。投資有価証券売却益103.74億円(レデイ薬局81.89億円・イオン九州株12.73億円。残る約9.12億円の対象は確認した一次資料では特定できない)で特別利益が増えた一方、減損損失118.80億円などで特別損失も増えた。純利益を大きく押し上げたのは法人税等合計が36.45億円から△0.28億円へ動いたことで、短信は「減損損失の計上による法人税等調整額の減少」と説明している。

イオン九州の株を売ったのはなぜか。

開示が挙げる理由は「資産の効率化及び財務体質の強化」(2025年10月31日開示・逐語)である。保有していた525,300株の全部を、イオン九州の売出にあわせて売却し、売却総額14.21億円・売却益12.73億円を特別利益に計上した。それ以上の説明は開示にない。

なぜ社名は「イオン四国」ではなくフジのままなのか。

開示から言える事実は2つ。商圏が四国に収まらず中国・兵庫にまたがること(本社は広島市)、そして統合の法的な器が一貫してフジだったこと(株式交換の完全親会社もフジ、吸収合併の存続会社もフジで、消えたのはマックスバリュ西日本の社名の側)。それ以上の動機の説明は開示にない。

日本株シリーズ(連載中)

筆者が実際に保有する日本の個別銘柄を、1社ずつ同じフレームで読み解くシリーズです。1階(収益基盤)・2階(成長エンジン)・3階(将来オプション)の3層で構造を分析し、決算のたびに答え合わせを重ねていきます。

米国株シリーズ(連載中)

筆者が保有または注視している米国個別株を、1社ずつ同じフレームで読み解くシリーズです。1階(収益基盤)・2階(成長エンジン)・3階(将来オプション)の3層で構造を分析し、決算のたびに答え合わせを重ねていきます。

参考リンク