日本マクドナルドHD(2702)はなぜ、売上が0.4%しか増えないのに営業利益が15%伸びるのか|1〜3階構造で読む、FC比率を設計する会社【日本株シリーズ第8回】

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はじめに——家の前に、三つのハンバーガー屋があった

家の前の三つの店。子どもの頃の居場所だったハンバーガー屋へ駆けていく

デフォルトの居場所

子どもの頃、住んでいた家のすぐ目の前に、マクドナルドとロッテリアとドムドムバーガーがあった。

そのなかで、いちばん好きだったのがマクドナルドだった。暇さえあれば入り浸っていたような記憶がある。塾の休み時間にも行った。中学、高校、大学と進んでも、デフォルトの居場所はマクドナルドだったように思う。

それから何十年か経つ。今でも家で「今日の夕食、マックのデリバリーにしようか」と言うと、家族から歓喜の声が上がる。

正直に言えば、特別においしいわけではない。それでも、なぜか嬉しくなってしまう。大なり小なり、同じ経験をしている人は多いのではないかと思う。

この会社の株を、私は2009年に買った。記録に残っているかぎり、それが最初だ。客としての付き合いのほうが、株主としての付き合いよりはるかに長い。

優待が義務になった時期

ただし、ずっと嬉しいだけでもなかった。

株主優待の食事券は、店舗でしか使えない。デリバリーもモバイルオーダーも対象外だ。いま住んでいる場所は、店までがやや行きにくい。有効期限が近づくたびに残りを数えるような時期があって、「マクドナルドに行かなければ」が義務になっていった。しまいには、使い切れずに期限を迎えた券もあったように記憶している。

好きな店が、カレンダーに追われる用事になる。あの感覚は、居場所だった子ども時代の店とは別物だった。

いまは保有の規模を、生活のペースに合わせて適正化した。無理のない枚数になったので、また負担なくマクドナルドを楽しめるようになった。家族がデリバリーで歓ぶのも、店で券を切るのも、義務ではなく選択に戻っている。

決算の違和感

2026年8月7日、その会社——日本マクドナルドホールディングス(2702)——が第2四半期(中間期)の決算短信を出した。

連結の売上高は2,040億58百万円。前年同期比で0.4%の増加である。ほぼ横ばいだ。その横で、営業利益は302億円。前年同期比で15.2%増えている。

売上がほとんど動かないのに、利益が二桁で伸びる。数字だけ見ると、違和感がある。

同じ短信に、もう一本の売上が載っている。システムワイドセールス——直営店とフランチャイズ店を足した、街で実際に売れたハンバーガーの合計だ。中間で4,643億22百万円。前年同期から345億35百万円増えている。

率で並べると、会計の売上は+0.4%、街の売上(システムワイドセールス)は+8.0%である。会計の売上はほぼ止まっている。街の売上は増えている。この二つは同じ言葉で「売上」と呼ばれているが、中身が違う。

家の前にあった店は、私にとってはただの居場所だった。決算書を開くと、その店は「誰のP/Lに載っているか」まで設計されている。

この記事は、その差がどこから来るかを構造で読む。結論を先に書くと、日本マクドナルドは「店を増やす会社」というより、直営とフランチャイズの比率を設計する会社である。比率が動くと、連結の売上は減っても、利益は増えることがある。2026年の中間は、その設計が数字に出た四半期だった。

日本マクドナルドホールディングスという会社の輪郭

中心の本社と周囲に広がる小さな店舗群を見上げる投資家

外側から測る。

規模と決算

東証スタンダード上場。決算は12月期。持株会社で、事業は日本マクドナルド株式会社が担う(出資100%)。代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)はトーマス・コウ氏。発行済株式は1億3,296万株。

2025年12月期の連結売上高は4,166億2百万円、営業利益は532億57百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は339億9百万円。店舗数は同年末で3,025店、2026年6月末の中間では3,038店まで増えている。

グローバルとの関係

大株主は、グローバルのマクドナルド系列だ。2025年12月31日現在、MCDONALD’S RESTAURANTS OF CANADA LIMITED が25.25%、MCD APMEA SINGAPORE INVESTMENTS PTE. LTD. が10.07%。合わせて約35%。有価証券報告書の関連当事者注記では、マクドナルド・コーポレーションを「その他の関係会社の親会社」と置き、被所有は間接35.37%とある。

ライセンス契約に基づき、日本マクドナルド株式会社はシステムワイドセールスの3.0%をロイヤリティとして支払う。2025年の支払額は266億59百万円。日本の店で売れた金額の3%が、契約の前提として外に出ていく構造である。

海外の連結子会社はない。海外売上高もない。開示上、この会社は日本のハンバーガーレストラン事業だけを見れば足りる。

この会社は、階をひとつしか申告していない

一つの建物の中に店頭と設計の部屋が同居している断面図

フレームを当てる前に、断っておく。

報告セグメントは単一

報告セグメントは、ひとつしかない。

中間決算短信も有価証券報告書も同じ文言だ。「当社グループの事業はハンバーガーレストラン事業単一であるため、セグメント情報の記載を省略しております」。

第5回のイオンは9区分、第2回のコロワイドは子会社名ベースの6区分だった。すかいらーく(第6回)は1つ。マクドナルドも1つである。

PLの中は二つに割れている

ただし、損益計算書の中身は二つに割れている。

  • 直営店舗売上高——自社で回している店の売上
  • フランチャイズ収入——加盟店からのロイヤリティ、賃貸料、広告宣伝費負担金、店舗運営事業の売却から生じる利益など

単一セグメントのなかに、稼ぎ方が二つある。会社が分けて開示しているのは、セグメントではなく、この売上の内訳である。

したがって、以下で私が1階・2階と呼ぶものは、すべて当ブログの整理である。

本記事の1階・2階の区分は、当ブログが事業の性質から独自に整理したものであり、日本マクドナルドホールディングスが開示している報告セグメントの区分とは異なります。同社の報告セグメントはハンバーガーレストラン事業単一であり、セグメント別の収益及び業績は有価証券報告書・決算短信のいずれでも記載が省略されています。会社の区分は、直営店舗売上高とフランチャイズ収入の内訳として開示されています。

ふたつの売上——SWSと連結売上高

街の売上の高い積み重ねと、会計の帳簿の低い積み重ねの対比

階を数える前に、物差しを二つ置く。

定義

次の表が、この記事の物差しである。

指標定義2025年12月期
システムワイドセールス(SWS)直営店+FC店の合計売上。街で売れた金額8,886億49百万円
連結売上高直営店舗売上高+フランチャイズ収入4,166億2百万円

有価証券報告書の注記は明確だ。SWSは「第5[経理の状況]には記載されておりません」。連結PLの売上高と一致しない、と会社自身が書いている。

中計はSWSで置いている

中期経営計画(2025〜2027年度、2025年2月公表)の財務目標も、この物差しで置かれている。

目標数値
全店売上高(=SWS)の年平均成長率4〜6%
営業利益の年平均成長率4〜6%
営業利益率13%
ROE11%以上

「全店売上高」はSWSと同義だと、有報が注で定義している。会社が成長を測る物差しは、会計の売上ではなく、街の売上である。

2025年のSWSは、開示されている近年の系列で見ると5期連続で更新している(金額は8,886億49百万円)。一方、連結売上の伸びはSWSほどではない。SWSは2024年の8,291億40百万円から+7.2%、連結売上は2024年の4,054億77百万円から4,166億2百万円へ約+2.7%だ。店全体が伸びていても、直営をFCに移せば、連結に載る直営売上は減り、代わりに金額としては小さいが利益率の高いFC収入が増える。

この二重構造が、2026年中間の「売上ほぼ横ばい・利益二桁増」の土台である。

1階——3,000店のハンバーガー

賑やかなハンバーガー店内で食事を楽しむ家族連れ

1階は、客が店でハンバーガーを買うという、いまの本業そのものである。

既存店と需要

中間の既存店売上高は前年同期比5.9%増。2015年度第4四半期から2026年度第2四半期まで、43四半期連続で既存店が増えている、と短信は書く。システムワイドセールスも中間で4,643億22百万円まで積み上がった。

会社が中計で掲げる三本柱の一つが「メニュー・バリュー」だ。2026年2月には価格改定を実施しつつ、期間限定やコラボ、FIFAワールドカップ関連の体験施策を重ねている。月次のIRセールスリポートを見ると、2026年に入ってからも既存店はおおむねプラスで推移している(6月の既存店は+2.7%など)。ただし内訳は変わってきている。第1四半期の既存店は客数+4.8%・客単価+2.3%だったが、第2四半期は客数+0.2%・客単価+4.3%。6月にいたっては客数が1.5%減っている。伸びを支えているのは客の数ではなく単価で、2026年2月の価格改定と地続きだ。1階の需要は折れていないが、支え方は変わっている。

1階の問いは単純だ。「いま、何で稼いでいるか」。答えは、日本全国のマクドナルドで客が払っている金額である。それがSWSに現れ、その一部が直営売上として連結に載る。

直営の原価と店舗ポートフォリオ

直営店の中身も、短信は原価の内訳を出している。2026年中間の直営店舗の売上に対する原価率(連結全体の原価率とは分母が違う)は87.6%(前年88.2%)。材料費率は38.1%へ上がり、労務費率は24.8%へ下がった。材料は重く、店舗オペレーションの効率化で労務を削っている、という読みが立つ。FC化が進んでも、残った直営の材料インフレは消えない。通期修正が原材料をリスクとして残すのは、この行と整合する。

店舗ポートフォリオ側では、2025年からの3年で純増100店以上、リモデル1,000店以上を掲げる。2025年通期は新店120・閉店83・リモデル220。2026年中間は新店35・閉店22・リモデル189。店を増やしつつ、キャパシティ不足の店を閉じ、改装で単店の売上を上げる——1階の床面積と体験を直している、と読める。

2階——FC比率という設計図

直営からフランチャイズへ、店の鍵を渡す二人

2階は、店を自分で回す以外の稼ぎ方である。

中計の戦略文言は、こうだ。「地域に根差したフランチャイズビジネスの強化・拡大を通じて、さらなる成長を目指します」。

区分移行——閉店ではない

2026年中間の店舗数は、その設計が動いていることを示す。

2025年末新店閉店区分移行2026年中間末
直営70511△9△43664
FC2,32024△13+432,374
合計3,02535△223,038

直営が41店減り、FCが54店増えている。合計は13店の純増だ。重要なのは、区分移行43店である。これは閉店ではない。直営だった店が、FC側のカウントに移った。街から店が消えたわけではない。

売上の入れ替わり

PLはその移し替えを、そのまま映す。

(百万円)前年中間当中間増減
直営店舗売上高133,347123,824△9,523
フランチャイズ収入69,96680,233+10,267
売上高合計203,314204,058+744
売上原価率79.1%77.3%△1.8pt
営業利益26,22230,200+3,978

直営売上が95億円減り、FC収入が103億円増える。合計の売上は7億円しか増えない。一方、直営の重い原価(材料・労務・その他)が連結から落ち、連結売上に対する売上原価率は1.8ポイント改善する。営業利益は40億円近い増加になる。ただしFC収入にも原価はある。中間の数字から逆算すると、FC収入に対する原価率は61%台で、前年とほぼ変わらない。加盟店に貸している土地・建物の費用が残るためだ。FC化は原価をゼロにするのではなく、材料費と人件費の重い部分を加盟店側に移している。

フランチャイズ収入の中身は、短信の注記どおり、ロイヤリティ、賃貸料、広告宣伝費負担金、店舗運営事業の売却から生じる利益等である。2025年通期では、FC収入1,465億13百万円のうち、店舗売却益23億15百万円が含まれている(有報)。一過性の売却益と、継続的なロイヤリティ・賃貸を、同じ「FC収入」の行で読むときは分ける必要がある。

2階かどうかの確認

当ブログの4つの確認を当てる。

1. 会社が経営戦略の柱として分けているか —— 中計が「FCの強化・拡大」を正面に置く。⭕

2. 成長率が1階と違うか —— 中間の直営売上は減少、FC収入は二桁増。⭕

3. 顧客・市場・収益モデルが違うか —— 客は同じマクドナルドでも、株主から見ると収益モデルが違う(店舗粗利 vs ロイヤリティ+賃貸+売却)。客側は同一ブランドなので「半分⭕」、収益モデルだけ見れば⭕。

4. 資源を別枠で配分しているか —— 店舗ポートフォリオとFC拡大を「密接に関係」と有報が書き、区分移行を毎年実行している。⭕

客の目線では同じ1階の延長に見える。株主の目線では、店を出す以外の稼ぎが数字として育っている。第4回の大戸屋(FCへの卸)、第2回のコロワイド(調達会社)と同型の、外食における2階である。

持株会社と不動産賃貸

もう一つ、HD本体の役割がある。有価証券報告書は、提出会社(持株会社)の事業内容を「グループ企業の連結経営戦略の策定業務と実行業務及び不動産賃貸業務」と書く。FC網を広げる会社にとって、土地・建物の賃貸は単なる管理コストではなく、収入の経路でもある。フランチャイズ収入に賃貸料が含まれる、という短信の注記と、ここでつながる。

3階——見当たらない。デジタルは1階の延長

まだ何も建っていない明るい屋上に立つ家族

3階の要件は二つある。①まだ収益になっていない。②既存事業の延長ではなく、別の産業・別の役割へ踏み出す。

デジタルと海外

開示を見るかぎり、両方を満たすものは見当たらない。

「Myマクドナルド リワード」を含むデジタル会員基盤は、2025年に本格展開が進んだ。契約負債の注記にもポイント制度が載る。これは需要の取りこぼしを減らし、来店を継続させる仕組みであり、1階の強化である。モバイルオーダーやキオスクも同様だ。

海外事業はない。有報は「本邦以外の国または地域に所在する連結子会社がなく、かつ海外売上高及び有形固定資産もない」と書く。カッパのベトナムのように「まだ小さい海外」すらない。

減点にしない

サステナビリティや人材(なでしこ銘柄、OB/OG向けスポットワーク)は、事業の土台を守る施策であって、別の商売の芽ではない。

3階がないのは、外食の標準に近い。 第6回ですかいらーくについて書いたのと同じで、欠点として減点しない。ないものは、ない、と書く。

構造の考察——売上が伸びなくても、設計は進む

店舗の配置を設計図の上で組み替えている様子

減収予想とSWS

通期の会社予想は、2026年8月7日に上方修正された。売上高4,080億円、営業利益555億円、純利益350億円。前回予想からはそれぞれ+25億、+10億、+5億である。

一方、前期実績の売上高は4,166億2百万円だ。修正後の予想でも、前期比では減収になる(△2.1%)。利益は増益予想のまま。

減収予想を「縮小」と読む前に、物差しを戻す。会社が中計で伸ばすと約束しているのはSWSである。直営をFCに移せば、連結売上は減りやすく、利益率は上がりやすい。2025年通期でも、直営は787店から705店へ、FCは2,201店から2,320店へ移っている。区分移行113店が含まれる。設計はQ2だけの話ではない。

リスクも、会社が一次で書いている。通期修正の理由欄は、中間の上振れを織り込む一方で、原材料価格の上昇は期初想定を上回る見込みだと残している。FC化は原価の一部を加盟店側に移すが、ロイヤリティの土台であるSWSそのものが、原材料高と価格転嫁の綱引きの影響を受ける。

中計の財務目標のうち、ROEは会社IRの財務指標サマリーで2025年に12.7%となり、目標の「11%以上」をすでに超えている。営業利益率13%も、修正後の通期予想ベースでは55,500/408,000=13.6%になる(2025年実績は53,257/416,602=12.8%)。ただしこの二つは、直営をFCに移して分母(連結売上高)を縮めるほど、自動的に近づきやすい指標でもある。伸びているのはSWSと既存店であり、率のほうは設計の副産物として上がる部分がある。だから会社は中計で、率だけでなく全店売上高(SWS)のCAGRを正面に置いている——物差しを二層で読むと、その置き方の一貫性が見える。

バランスシートとキャッシュ

自己資本比率は中間で80.9%。有利子負債に依存した拡大ではない。貸借対照表の土地は301億11百万円、建物は1,100億34百万円、敷金及び保証金は440億21百万円。すかいらーく(第6回)が土地を総資産の2.3%しか持たなかったのとは、所有の厚みが違う。マクドナルドは床をある程度持ちつつ(中間の土地301億11百万円は総資産の約8.3%。すかいらーく第6回の2.3%より厚い)、その上の店を直営とFCに振り分けている。

キャッシュ・フローは中間で、営業CF244億85百万円、投資CF△217億44百万円(有形固定資産取得223億54百万円が主)、財務CF△75億27百万円(配当74億45百万円が主)。稼いだ現金を店と改装に戻し、残りを配当に回す型である。大規模な自社株買いの取締役会決議は、有報の自己株式の状況を見るかぎり見当たらない。

株主にとって、この構造は何を意味するか

デリバリーの袋を受け取って喜ぶ家族と、テーブルの冊子

優待

株主優待は食事券の冊子である。バーガー・サイド・ドリンク各6枚が1冊。年2回(6月末・12月末基準)。

株数1回あたり
100〜299株1冊
300〜499株3冊
500株以上5冊

条件が一つ重い。継続して1年以上保有していること。具体的には、同一株主番号で100株以上が、基準日に3回以上連続して記載されていること。100株を買っただけでは届かない。証券会社の変更や貸株、NISA切替で株主番号が変わると、連続が途切れることがある——会社の株主優待ページが注意書きしている。

デリバリー、モバイルオーダー、キオスクでは使えない。デジタルを伸ばしている会社が、優待だけカウンターに残している。

ここが、私の家の使い方とすれ違う点が二つある。

ひとつは経路だ。家族が歓ぶ「マック」の多くは、いまデリバリーだ。株主優待の冊子ではその歓びを買えない。店に行って切る券と、家に届く袋は、同じブランドでも経路が違う。会社から見れば、どちらもシステムワイドセールスに入る需要である。株主優待は、そのうち店頭の体験だけに紐づいている。

もうひとつは、枚数と生活圏の噛み合わせだ。店までが行きにくい場所に住んでいると、冊数が増えるほど「行きたい」が「行かねば」に変わる。継続1年以上でようやく届く制度は、短期の権利取りを弾く一方で、届いたあとの消化は完全に株主側の生活に依存する。私も、届く券と生活圏が噛み合わなかった時期に一度この負荷を経験している。いまは無理のない付き合い方に戻した。優待利回りの話をする前に、使い切れるかどうかがある。

優待費用の会社開示はない。株主数は有報の所有者別で361,904人(2025年12月31日・集計)。継続保有者数は未開示なので、円換算のコスト下限はここでは置かない。

配当

方針は、2027年度に株主資本配当率3%を目標にする、というものだ。期末年1回。2025年は56円、2026年は64円を想定。Q2時点で配当予想の修正はない。

持ち分と当事者性

個人その他の持株比率は約49%(有報)。外国人が約47%。グローバル系列が約35%を持つ上場会社のなかで、個人も厚い。従業員持株会(日本マクドナルドグループ持株会)も大株主の表に入る。

ロイヤリティ3%は、株主還元の前に先に引かれるコストである。SWSが伸びるほど支払額も増える。2024年の248億74百万円から2025年の266億59百万円へ増えたのは、街の売上が伸びたことの裏返しでもある。成長と流出がセットになっている。

株主として見るべきは、会計売上の一本槍ではない。SWS、既存店、直営とFCの店数、FC収入に含まれる売却益の注記——この四点を並べると、設計の進み方が見える。

直近のイベント——2026年8月7日の上方修正

目印を追い越して先へ進む店の並びと家族

一次資料は二本ある。中間決算短信と、通期連結業績予想の修正に関するお知らせ。いずれも2026年8月7日付。

中間の実績(2026年1月1日〜6月30日)

短信のサマリーを、そのまま並べる。

指標実績前年同期比
売上高204,058百万円+0.4%
営業利益30,200百万円+15.2%
経常利益30,816百万円+17.8%
中間純利益19,657百万円+17.0%
既存店売上高+5.9%(43四半期連続増)
SWS464,322百万円+34,535百万円

通期予想の修正

同日の修正開示による、前回予想との差は次のとおりである。

前回予想今回修正前期実績
売上高405,500408,000416,602
営業利益54,50055,50053,257
経常利益54,50055,50052,051
純利益34,50035,00033,909
1株当たり利益259.48円263.24円255.04円

修正理由は、中間の実績を踏まえた上方修正。原材料は想定超えのリスクとして残る。配当予想(年間64円)は変更なし。

半期報告書の提出予定は2026年8月10日。中間短信は、公認会計士または監査法人の期中レビューの対象外である(短信の注記どおり)。

おわりに——家の前の店は、帳票の上でも設計されている

夕方の店と家のあいだを歩く親子と配達のスクーター

はじめに書いた店は、ただの居場所だった。途中で義務にもなった。いまはまた、選択としてそこに戻れている。

その店を決算書の側から見ると、同じ風景が別の設計図になる。

連結の売上は中間でほとんど増えず、街の売上は増えた。直営が減り、FCが増えた。帳票では重い直営売上が削られ、利益率の高いFC収入が載る。売上が止まって見えても利益が伸びるのは、このためだ。

日本マクドナルドは店を消しているのではない。誰のP/Lに店を載せるかを設計している。 優待にも店頭と継続保有という設計がある。株主の側にも、使い切れる枚数という設計が要る——居場所が用事に変わるのを、一度こちらで経験した。

2009年に買ったときは、そこまで見ていなかった。第5回のイオンは床を持ち、第6回のすかいらーくは床を借りた。本回は、床の上の店の所有形態を動かす会社だ。

次に決算が出たら見る場所は決まった。SWS、既存店、直営とFCの店数、FC収入の注記。会計売上の一行だけでは足りない。家で「マックのデリバリー」と言うときと同じ店を、別の物差しでも見る、というだけのことだ。

FAQ

連結売上が伸びないと、成長していないのか

必ずしもそうではない。会社が中計で伸ばすと置いているのはシステムワイドセールス(直営+FCの合計売上)である。直営をFCに移すと、連結売上は伸びにくく、利益率は上がりやすい。

直営店が減るのは、事業の縮小か

閉店と区分移行は別である。2026年中間は区分移行43店があり、直営減の多くはFC側への移管として説明できる。合計店舗数は純増している。

フランチャイズ収入は、すべてが安定したロイヤリティか

いいえ。ロイヤリティ・賃貸・広告負担に加え、店舗運営事業の売却益が含まれる。2025年通期は売却益23億15百万円が注記されている。継続分と一過性を分けて読む。

株主優待は100株あればすぐ届くか

届かない。継続1年以上(同一株主番号で100株以上が3回以上連続記載)が条件。年2回、食事券冊子。発送は6月末基準日分が9月下旬、12月末基準日分が翌年3月末。権利確定から手元に届くまで3か月ほどある。デリバリーやモバイルオーダーでは使えない。店まで行きにくい生活だと、券の消化が負担になることもある。

米国のマクドナルド株と同じ会社か

日本事業の持株会社として独立上場している。グローバル系列が約35%を持ち、日本法人はシステムワイドセールスの3%をロイヤリティとして支払う。海外売上は開示上ない。

中計の営業利益率13%は達成しているか

分母は連結売上高で読むのが自然だ(SWS分母だと水準が合いにくい)。2025年通期は53,257/416,602=約12.8%。修正後の2026年通期予想では55,500/408,000=約13.6%で、目標13%の射程に入る。中間だけの14.8%は季節と売却益の影響も含むので、通期と内訳で確認する。なお率は、直営をFCに移して分母を縮めるほど近づきやすい面もある。

筆者が実際に保有する日本の個別銘柄を、1社ずつ同じフレームで読み解くシリーズです。1階(安定基盤)・2階(成長エンジン)・3階(将来オプション)の3層で構造を分析します。フレームは米国株シリーズと共通です。

日本株シリーズ(連載中)

筆者が実際に保有・分析した米国個別株を、1社ずつ同じフレームで読み解くシリーズです。本稿の1〜3階のフレームはここで導入したもので、同じ物差しで日米を比べられます。

米国株シリーズ(全9回)

参考リンク


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