Alphabetはなぜ「検索の会社」と呼んではいけないのか|広告・クラウド・Waymoが織りなす次の10年【米国株シリーズ第5回】【2026年7月更新】

📝 更新情報

2026年7月25日

・Q2 2026決算(7月22日発表)の答え合わせを末尾に追記。Google Cloudは$248億(+82%)と再加速し、バックログは$5,140億へ。一方で通期CapEx見通しは最大$2,050億へ再引き上げ、四半期フリーキャッシュフローは−$59億とマイナスに転じた。→ 該当箇所

本文はFY2025・Q4時点の記録です。これ以前の更新は記事末尾の改版履歴を参照してください。

この記事は、筆者が実際に保有する米国個別銘柄を1社ずつ紹介していくシリーズの第5回だ。第1回のイーライリリー(LLY)に続き、今回はAlphabet(GOOGL)を取り上げる。シリーズの趣旨は第1回の冒頭にまとめているので、初めての方はあわせてご覧いただきたい。

はじめに──なぜ今、Alphabetなのか

Alphabetの3階建て事業構造を象徴する近未来ビル

「検索エンジンの会社でしょ?」──そう思っているうちに、気づけばあなたの日常はAlphabetに包囲されている。

スマートフォンで写真を撮ればGoogleフォトに同期され、メールはGmailで管理し、行き先はGoogleマップで調べ、動画はYouTubeで学び、会社のデータはGoogle Driveに預けている。そしてこれから、iPhoneのSiriまでもがGeminiの脳みそを借りて動き始める。

それでも「広告依存の旧世代企業」というレッテルを貼ったまま素通りしていないだろうか。もしそうなら、この記事はあなたのために書いた。

なぜ今、Alphabetか。それは2026年現在、この会社がまさに「変わり目」にいるからだ。FY2025、Alphabetは年間売上が初めて4,000億ドルの壁を突き破り、$4,028億を記録した。しかもその成長エンジンが、広告からクラウド・AIへと静かに、しかし確実にシフトし始めている。Google Cloudは直前四半期で+48%成長という、大企業の基幹事業としては異次元の伸びを見せた。

「3階建て」というフレームで読み解くと、この企業の輪郭が一気に鮮明になる。盤石な広告収益が「1階」、急成長するAIクラウドが「2階」、そして自動運転Waymoが商業化フェーズに踏み込む「3階」。それぞれが独立して機能しながら、互いを強化し合う構造は、他のMag7にはない唯一無二のアーキテクチャだ。

この記事では、その構造をファクトで徹底解剖し、競合との比較を通じて「GOOGLは今、買い増す価値があるのか」という問いに正直に答えたい。

Alphabetの事業概要と最新業績

Alphabet事業概要とポートフォリオ

Alphabetは2015年にGoogleの持株会社として設立され、現在は大きく「Google Services」「Google Cloud」「Other Bets」の3セグメントで構成される。FY2025(2025年1〜12月)の主要KPIを確認しよう。

指標数値前年比
年間総売上$402.8B+15%
Q4売上$113.8B+18%
Q4純利益$34.46B+30%
Q4 EPS$2.82+31%(予想$2.63を7%超過)
営業利益率31.6%ほぼ横ばい
時価総額(2026年2月)$4.10兆

Q4のEPSは市場予想$2.63を7%上回り、売上も$111.4Bの予想に対して$113.8Bと2.2%のビートを記録した。Sundar Pichai CEOはこの結果を受けて「AIへの投資が実を結んでいる」と強調し、2026年のCapExとして$1,750億〜$1,850億(2025年比ほぼ倍増)を投じる計画を発表している。

1階:安定基盤──世界を制する広告エンジン

Google検索が世界の情報インフラを支えるネットワークイメージ

Alphabetの屋台骨は「Google Services」セグメントだ。Q4 2025で$95.9Bの売上を叩き出し、営業利益だけで$40.1Bに達する。その営業利益率は40%を超え、これほどの規模でこれほどの利益率を維持できている企業は、世界を見回してもほとんど存在しない。

Google Search──91%のシェアという要塞

グローバルの検索エンジンシェアは2026年に入っても約91.4%でGoogleが独占している。2位Bingは4.2%、ChatGPTやPerplexityなどAI検索が台頭しても、その牙城は揺らいでいない。日本市場でも同様で、Googleのシェアは約76.6%、モバイルに限定すると95%超という圧倒的な数字だ。

Q4 2025のSearch & Other売上は前年比+17%成長。「AIがオーガニック検索を食い潰す」という悲観論が流れる中で、実際には検索クエリ数が過去最高を更新しており、AI OverviewsやAI Modeがむしろ検索の高度化と収益化を後押ししている。

YouTube──年間$600億の怪物メディア

YouTubeは2025年、広告とサブスクリプションを合計した年間売上が$60B超を初めて突破した。Sundar Pichai CEOはNielsenのデータを引用し、YouTubeが米国でNo.1ストリーマーのポジションを維持していることを強調している。有料サブスクリプション(YouTube Premium + Google One)は全体で3億2,500万人を超え、広告収益に依存しない安定した収益源として機能し始めた。

Subs/Platforms/Devices──意外な急成長セグメント

GoogleワークスペースやGoogle Oneなどサブスクリプション系、そしてAndroidやPixelを含むこのセグメントは、Q4 2025で+17%成長と、広告系セグメントよりも高い伸びを示した。Google Oneのサブスク拡大とYouTube Premiumの浸透が主な成長ドライバーだ。

2階:破壊的イノベーション──GeminiとGoogle Cloudが起こす静かな革命

Google CloudのデータセンターとGemini AIネットワークが融合する未来的なイメージ

「破壊的イノベーション」という言葉は濫用されがちだが、Google Cloudの直近の成長軌道を見れば、この言葉を使う理由が分かる。Q4 2025のGoogle Cloud売上は$17.7B、前年比+48%。この規模の事業が4割以上成長するケースは通常ありえない。しかもバックログ(未認識の受注残高)は前四半期比+55%の$2,400億に達し、この成長が一時的ではないことを証明している。

Geminiロードマップ──加速する進化

Geminiは2025〜2026年にかけて、驚異的なペースでモデルが更新された。

  • Gemini 2.5 Pro(2025年3月):リリース直後にLMArena(大規模モデルの評価サイト)で1位を獲得。思考機能を統合した最初の世代
  • Gemini 3 Pro(2025年11月18日リリース):Vertex AIに統合、2.5 Proから大幅な推論・命令遂行能力の向上
  • Gemini 3.1 Pro(2026年2月18日リリース):現時点での最新世代。100万トークンのコンテキストウィンドウを持ち、NotebookLMやGemini CLIにも統合。2026年3月6日からAPIの最新エイリアスが3.1 Proに切り替わった

特に注目すべきは、GoogleがOpenAI(ChatGPT)とAnthropicを含む世界トップ10のAI研究機関のうち9社がGoogle Cloudの顧客であることだ。競合のAIモデルを動かすインフラをGoogleが供給しているという、なんとも奇妙な共存関係が成立している。また既存のGoogle Cloud顧客のうち70%以上がAI製品を利用中であり、AI採用率の高さがバックログの爆発的な増加に直結している。

Apple × Gemini──ゲームチェンジャーとなる提携

2026年最大のAIニュースのひとつが、2026年1月12日に公式発表されたAppleとのGemini提携だ。「徹底的な評価の結果、Googleの技術がApple Foundation Modelsに最も優れた基盤を提供すると判断した」──Appleはそう表明した。このマルチイヤー契約では、Apple側が年間約10億ドルをGoogleに支払い、SiriをGeminiで刷新する計画だ。

Appleのアクティブデバイスは20億台超。これはGeminiのユーザーリーチが一気に数十億人規模になる可能性を意味する。ChatGPTとの競争において、Geminiがデバイスレベルで先手を打ったという評価は過小ではない。

Google Cloudの競合比較

指標AWS(Amazon)Azure(Microsoft)Google Cloud
FY2024売上$107.6B$96.8B$43.2B
FY2024成長率+18.5%+30.1%+30.6%
Q4 2025成長率20%台(推定)鈍化傾向+48%
AI優位性Bedrock + AnthropicOpenAI + CopilotGemini + 自社TPU
主な特徴市場シェア最大・成熟Azureと既存企業ロイヤルティ急加速・AI特化

Azureが2025年にAI投資の過剰拡張で成長が鈍化する中、Google Cloudは加速という対照的な結果だ。自社設計のTPU(Tensor Processing Unit)による差別化と、Geminiを基盤としたエンタープライズAIソリューションの引き合いが、この成長格差を生んでいる。

3階:ムーンショット──Waymoが「本物」になってきた

Waymoの自律走行ロボタクシーが都市の夜道を走る

Other BetsセグメントはQ4 2025で$3.61Bもの損失を計上しており、短期的な財務指標だけで見れば「不採算部門」だ。しかしWaymoの直近の動きは、この3階に本物の価値が宿り始めたことを示唆している。

Waymoの現在地

  • 現在の週次乗車数:約40万回(2026年3月時点)
  • 2025年の乗車数増加:前年比4倍
  • 2026年末目標:週100万回(現在比+150%)
  • 展開都市:ロサンゼルス、サンフランシスコ、フェニックス、アトランタ、オースティン、マイアミなど。東京・ロンドンを含む20都市以上に拡大計画
  • 第6世代Waymo Driver(2026年2月12日発表):17メガピクセルの高解像度センサーと次世代LiDARを搭載、雨・雪への対応力を強化しながら運用コストを削減

週100万回を達成した場合の年間売上推定は約10億ドル(1乗車あたり最低$20として計算)。現時点では赤字事業だが、単独の事業評価額は$160億超と推定されており、これがAlphabetの企業価値に隠れた含み益として存在している。

Waymoの競合であるTeslaのFSD(Full Self-Driving)が日本を含む多くの市場で規制の壁に直面する中、Waymoはすでに20都市以上での商業展開を具体的に計画しており、ロボタクシー競争では圧倒的な先行者優位を築いている。

競合比較:Mag7の中でAlphabetはどこに立つか

Mag7ビッグテック4社の事業競争力を象徴するタワー群
評価軸AlphabetMicrosoftAmazonMeta
コア収益源検索広告(91%シェア)Office/Azure(成長鈍化)EC+AWSSNS広告(高成長)
AI差別化Gemini + 自社TPU + Apple提携OpenAI + CopilotBedrock + AnthropicLlama(OSS戦略)
クラウド成長+48%(Q4 2025)鈍化傾向安定成長非クラウド
ムーンショットWaymo(商業化フェーズ)Xbox/LinkedInKuiper衛星メタバース(苦戦)
2026年CapEx$1,750億〜$1,850億大型(減速懸念)$1,000億超$600億〜$650億
バリュエーション(PER)27.65倍35倍超(割高)40倍超(割高)28倍(近似)

投資家の視点で重要なのはPERだ。GOOGLの現在のPERは27.65倍で、テクノロジーセクター平均の31.84倍を約13%下回る。EPS成長率が+31%(Q4 2025)である事実と対比すると、PEG比率は1倍を大幅に下回り、「成長率の割に安い」という評価が成り立つ。

Microsoftが同種のAI競争に多額の投資をしながら成長率が鈍化し株価がMag7最下位パフォーマンスとなっているのと対照的に、AlphabetはAI投資の具体的な成果(Cloud+48%、Search+17%)を示せている点が強みだ。

リスクファクター:正直に向き合う3つの壁

独禁法リスクとAI投資の天秤を表すビジュアル

リスク1:独禁法訴訟──長期戦の消耗

2024年8月、Mehta判事がGoogleの検索市場独占を違法と認定した。2025年9月の是正措置ではChromeの強制売却は回避され、限定的なデータ共有命令にとどまり、株価は5.8%上昇して「弾を避けた」とも評された。しかし2026年2月、DOJと複数の州がこの是正措置を不服として控訴した。さらに広告技術独占を巡る別訴訟も並行して進行中だ。

リスク2:AI投資のROI不確実性

2026年のCapEx計画は$1,750億〜$1,850億と、2025年比でほぼ倍増だ。ビッグテック4社合計のAI投資は$6,500億超と試算されており、この水準が利益に転換しなければ、株主への還元余地は大きく削られる。「投資フェーズ」という説明が市場に受け入れられ続けるかどうかは、Cloudの成長維持が前提条件となる。

リスク3:AI検索による「共食い」リスク

Perplexity AIやChatGPT Searchなど、AI検索の台頭により「Googleで検索する行為」そのものが代替される可能性は、これまで最大のリスクとして語られてきた。ただし現時点では、AI Overviewsの導入がSearch収益を蝕む証拠はなく、むしろ検索クエリ数の増加とSearchのQ4 +17%成長が、この懸念を払拭する方向に働いている。AI搭載検索が「検索離れ」ではなく「検索の高度化」として機能しているなら、Googleにとっては追い風だ。

アナリスト評価と株価の現在地

Alphabetのアナリスト評価と市場の見方

2026年3月現在、GOOGLを担当する67名のアナリストのコンセンサスは「Strong Buy」(60Buy/7Hold/0Sell)、目標株価の中央値は$387.50だ。現在株価$301.00(2026年3月20日)から計算すると、約+28%のアップサイドを見込んでいる計算になる。

証券会社アナリストレーティング目標株価更新日
NeedhamLaura MartinBuy$4002026年3月13日
Wells FargoKen GawrelskiOverweight(格上げ)$3872026年2月23日
MizuhoLloyd WalmsleyOutperform$4102026年2月5日
JP MorganDoug AnmuthOverweight$3952026年2月5日
Tigress FinancialIvan FeinsethStrong Buy$4152026年2月19日
UBSStephen JuHold(慎重)$3482026年2月12日

Wells FargoのKen Gawrelski氏は「顧客データ・配信力・計算能力の3要件をすべて満たしているのはAlphabetだけ」として$290〜$310水準での買い増しを推奨している。一方UBSは業績の方向性は良いとしつつも、CapEx拡大リスクを理由にHold(目標$348)にとどめている。

まとめ──「3階建て」の本当の意味

3階建ての本当の意味のまとめ

ここまで長々と読んでくれたあなたに、最後に問いを返したい。「AIの恩恵を受ける企業」を探しているなら、Alphabetはその最右翼のひとつだ。しかしその理由は「Geminiが凄いから」ではない。

  • 1階が強すぎるから、2階に賭けられる。 年間$400Bの収益エンジンが生み出すキャッシュが、AIインフラへの$1,850億の投資を可能にする。
  • 2階が速く伸びているから、3階のコストを正当化できる。 Google CloudのバックログはQ4だけで+55%増え、$2,400億に達した。この受注残がある限り、Waymoへの投資は「博打」ではなく「次の柱を育てる戦略的支出」だ。
  • 3階が現実になりつつあるから、企業価値に含み益が宿る。 週40万回から100万回へ向けて加速するWaymoは、2026年末までに単独でも年間$10億規模の売上をもたらす事業になりつつある。

冒頭でこう問いかけた。「検索エンジンの会社でしょ?」正確には違う。Alphabetは「人類の情報インフラを制し、AIで世界を再配線しようとしている会社」だ。そしてその再配線は、あなたのiPhoneのSiriにまで及んでいる。

20億台のAppleデバイスにGeminiが宿る日は、2026年内に来る。そのときこの記事を読んでいたことを、きっと思い出すことになる。

【2026年7月16日追記】Q1決算で3階建てを答え合わせ

2026年4月29日、AlphabetはQ1 2026決算を発表した。本稿はFY2025通期とQ4(Cloud +48%、バックログ$2,400億、CapEx $1,750〜1,850億)までを織り込んで書いていた。四半期ひとつ分が乗った今、1〜3階のどこが検証され、どこが一段上にいったかを整理する。

数字の答え合わせ

執筆〜Q4 2025時点の見通しと、Q1 2026実績を並べる。金額はAlphabet公式の決算開示に基づく。

項目本稿執筆〜Q4 2025時点Q1 2026実績・最新見通し
全社売上FY2025 $402.8B(+15%)Q1 $109.9B(+22%)
Google Services(広告中心の1階)Q1 $89.6B(+16%)
Google CloudQ4 $17.7B(+48%)Q1 $20.0B(+63%)
Cloud 営業利益(成長と採算の両立を評価)Q1 $66.0億(前年$21.8億)
Cloud バックログ$2,400億(前四半期比+55%)$4,600億超(前四半期比ほぼ倍)
CapEx 通期ガイダンス$1,750〜1,850億$1,800〜1,900億へ引き上げ
Waymo商業化フェーズ(執筆時の現在地)週50万回の完全自動運転ライド

2階:+48%は「通過点」だった

本稿はQ4のCloud +48%を「大企業の基幹事業としては異次元」と書いた。Q1は+63%・$200億到達で、その評価を後から弱める材料は出ていない。バックログが$2,400億から$4,600億超へほぼ倍増したことは、「一過性の四半期」ではなく、受注が先に積み上がっている構造を強化する。

同時にCapEx通期は$1,800〜1,900億へ引き上げられた。本文のリスク節が置いた「AI投資の回収が前提」という条件は、より重い金額で残る。ただしQ1は営業利益率36.1%(+2pt)まで拡大しており、「使うほど必ず傷む」単純図式でもない。2階は成長の証明と投資負担が同時に太くなった、と読む。

1階と3階:検索は折れず、Waymoは数字が乗った

1階(広告・Services)はQ1もGoogle Services +16%。Search & other が牽引する構図は、本文が紹介した「AIがオーガニック検索を食い潰す」という悲観論への執筆時点の反論を、少なくともこの四半期では支持する。共食いの最終審判はまだ先だが、Q1単体で1階崩壊の証拠は出ていない。

3階のWaymoは、週50万回という具体的な運行スケールが公式に示された。Other Betsの赤字体質そのものが消えたわけではないが、本稿が置いた「この3階に本物の価値が宿り始めた」という読みは、価値が具体的な運行数字になったぶん、前に進んだ。Tesla FSDとの対比軸(規制・商業展開)は本文・内部リンクの枠のまま据え置く。

いまの読み

  • 維持:1階広告エンジン+2階Cloud/Gemini+3階Waymo、という3階建て
  • 検証済み(上方):CloudはQ4の+48%からQ1の+63%・$200億へ加速。バックログほぼ倍
  • 条件は重い:CapEx通期$1,800〜1,900億。投資回収の証明は引き続き2階の持続成長が鍵
  • 3階の進捗:Waymo週50万回。売上規模の開示はまだ限定的で、通期のOther Bets収支は別途監視
  • 要監視:規制(広告・独占)、AI検索の共食い、CapExの2027年「さらに増加」示唆、競合クラウドとのシェア

FY2025通期やQ4のCloud $17.7B、CapEx当初レンジは執筆時点のスナップショットとして本文に残す。四半期の鮮度は本追記とAlphabet IRを優先してほしい。

【2026年7月25日追記】Q2決算で3階建てを答え合わせ

2026年7月22日、AlphabetはQ2 2026(6月30日締め)決算を発表した。Q1追記では、Cloud $200億・+63%、バックログ$4,600億超、CapEx通期$1,800〜1,900億までを織り込んでいた。その一段あとで、2階がどこまで加速したか、そして投資負担がどこまで重くなったかを整理する。

数字の答え合わせ

Q1 2026実績と並べる。金額はAlphabet公式の決算開示に基づく。

項目Q1 2026(前回追記)Q2 2026実績
全社売上$109.9B(+22%)$119.8B(+24%)
Google Services$89.6B(+16%)$94.5B(+15%)
Google Cloud$20.0B(+63%)$24.8B(+82%)
Cloud 営業利益$66.0億$88.1億(前年$28.3億)
Cloud バックログ$4,600億超$5,140億(前四半期比+$500億超)
営業利益率(全社)36.1%34%(営業利益+30%・$407.7億)
CapEx(四半期)$357億$449億(前年比2倍)
CapEx 通期ガイダンス$1,800〜1,900億最大$2,050億へ再引き上げ
フリーキャッシュフロー(四半期)−$59億(マイナス転落)
その他収益(純額)$980億(主に株式評価益)
希薄化後EPS$9.11(前年$2.31。評価益込み)
Waymo/Other Bets週50万回(Q1時点)運行KPIの更新なし。Other Bets営業損失−$18.0億

2階:+63%の次は+82%

Q1追記では、Q4の+48%を通過点と評価した。Q2はCloud売上$248億・+82%まで伸び、営業利益も$88.1億(前年$28.3億)と3倍を超えた。AIインフラとエンタープライズ向けAIソリューション、コアGCPが牽引という公式説明は、本文が置いた「2階=GeminiとCloud」の読みを、四半期ふたつ続けて上振れで支持する。

受注残高はさらに雄弁だ。バックログは$5,140億まで積み上がり、前四半期から$500億超増えた。会社は総額の5割強を今後24か月で売上計上する見込みとしている。規模の指標も揃った——Gemini Appの月間アクティブユーザー9.5億、APIトークン処理毎分220億(前四半期は160億超)、Fortune 100のほぼ9割がGemini Enterpriseを利用。2階は売上の加速と利用量の拡大が同時に起きた四半期、と読む。

投資負担:CapExは最大$2,050億、四半期FCFはマイナスへ

Q1追記は条件は重いとしてCapEx通期$1,800〜1,900億を監視項目に置いた。Q2でその条件はさらに重くなっている。四半期CapExは$449億と前年の2倍、通期見通しは最大$2,050億へ再引き上げられた。営業キャッシュフロー$391億を上回る投資により、四半期のフリーキャッシュフローは−$59億とマイナスに転じている。決算後に株価が下落したのは、増収増益ではなくこの投資計画が理由だ。

資金の出どころも変わった。6月に株式で$496億、社債で$203億を調達している。営業キャッシュフローだけでは投資を賄いきれない局面に入ったという事実は、本文のリスク節が置いた「AI投資の回収が前提」という条件を、一段重くする。

さらにCFOは、供給制約への対応としてQ3に外部データセンター容量の利用を広げる方針を示し、そのコストがCloudの営業利益率を圧迫すると述べた。Q2のCloud営業利益率は35.6%(前年20.7%)まで改善したが、この水準がそのまま続く前提では読まない方がいい。2階は成長の証明と投資負担が同時に太くなった——Q1追記のこの読みが、Q2ではより強い形で当てはまる。

1階と3階:検索は折れず、Other Betsは赤字が続く

1階はGoogle Services +15%(Search & other +17%、YouTube広告+13%)。AI機能がSearchのクエリ成長を押し上げている、という公式の語りは、本文が紹介した「AIがオーガニック検索を食い潰す」という悲観論に対して、Q1に続きQ2も反証側の材料を出した形だ。共食いの最終審判はまだ先だが、Q2単体でも1階は二桁成長を維持している。

3階は、本リリースにWaymoの運行回数更新はなく、Q1追記の週50万回を据え置く。Other Betsは売上$3.82億に対し営業損失$18.0億で、赤字は前年より拡大した。本稿が置いた「この3階に本物の価値が宿り始めた」という読みは破棄しないが、Q2で数字が一段進んだのは2階であり、3階は開示が薄い、が正確だ。

EPSの読み方:$9.11をそのまま実力と見ない

希薄化後EPS $9.11・純利益$1,121億は、その他収益のネット$980億(主に株式の未実現評価益)が効いている。前年同期のEPSは$2.31で、294%増という見出し数字はこの評価益込みだ。本業の強さは売上+24%、営業利益+30%、Cloud +82%で見る。評価益は四半期ごとに振れるため、Alphabetの実力と同一視しない。

いまの読み

  • 維持:1階広告+2階Cloud/Gemini+3階Waymo、という3階建て
  • 検証済み(上方):CloudはQ1 +63%→Q2 +82%・$248億。バックログも$5,140億へ積み増し
  • 条件はさらに重い:通期CapExは最大$2,050億へ再引き上げ。四半期FCFは−$59億。6月に株式$496億・社債$203億を調達
  • 1階:Services +15%。Search牽引は継続し、AI共食いの決定打は今回も出ていない
  • 3階:Waymo KPIは本リリース未更新。Other Bets営業損失は−$18.0億へ拡大
  • 読み方の注意:EPS $9.11は株式評価益込み。本業は売上・セグメント営業利益で読む
  • 要監視:Cloud営業利益率(CFOはQ3の外部容量利用で圧迫を示唆)、CapExの回収、規制、評価益の四半期変動

FY2025通期・Q1追記の表はそのまま残す。Q2の鮮度は本追記とAlphabet IRを優先してほしい。

米国株シリーズ(全9回)

筆者が実際に保有・分析した米国個別株を、1社ずつ同じフレームで読み解くシリーズです。

関連リンク

当ブログ内部リンク

外部リンク(一次情報・データソース)


🗂 改版履歴

2026-03-27 初版公開(Alphabetを広告・クラウド・Waymoの3階建てで分析)

2026-04-16 冒頭に米国株シリーズ第5回のリード段落を追加。内部リンク(テスラFSDの日本展開)を追記

2026-07-16 Q1 2026決算(4月29日発表)の答え合わせを末尾に追記。Cloud $200億・+63%、バックログ$4,600億超、CapEx通期$1,800〜1,900億への引き上げ、Waymo週50万回を反映。タイトルに【米国株シリーズ第5回】【2026年7月更新】を付与

2026-07-17 巻末に「米国株シリーズ(全9回)」ナビゲーションを追加

2026-07-25 Q2 2026決算(7月22日発表)の答え合わせを末尾に追記。Cloud $248億・+82%、バックログ$5,140億、通期CapEx最大$2,050億への再引き上げ、四半期FCF −$59億、Other Bets営業損失−$18.0億を反映。冒頭Noticeを更新情報形式に変更し、本セクションを新設