すかいらーくホールディングス(3197)はなぜ、土地を2.3%しか持たずに3,099店を回せるのか|1〜3階構造で読む、床を借りる会社【日本株シリーズ第6回】

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はじめに——駐車場のある店に、通うようになった

夕方の広い駐車場に車を停め、家族と小さな女の子がファミリーレストランへ歩いていく

すかいらーくホールディングス(3197)の株を買ったのは2017年である。記録に残っているかぎり、それが最初の買いだ。

きっかけは株ではなかった。生活のほうが先に変わった。

それまでは電車で移動する生活だった。都市部には店がいくらでもある。選択肢が多い場所で、わざわざ名前の知れたファミリーレストランに入ろうとは思わない。私にとってこの会社の店は、そこにあるのは知っているが入らない店だった。

車に乗るようになって、それが変わった。

郊外は事情がまるで違う。車を止められる。それほど待たずに座れる。そして、ゆっくりできる。子どもが小さかった時期でもある。この3つが揃っている店は、思っていたより少ない。ガストやバーミヤンの駐車場に車を入れる回数が、目に見えて増えた。

客として通うようになって、株主になった。順番はそういう順番である。

そしてその年、この会社は株主優待を3倍にしていた。2017年2月9日の開示で、100株の年間額は2,000円から6,000円へ、1,000株なら23,000円から69,000円へ引き上げられている。適用は同年6月末の基準日から。私が買ったのは、その後だ。

それから9年たって、この会社の有価証券報告書を読んで、少し意外なものを見つけた。

私が車を止めていたあの駐車場は、この会社のものではない。

第15期有価証券報告書のリースの注記に、こう書いてある。「当社グループは、主として店舗運営に必要な土地、建物及び駐車場などの不動産、並びに店舗設備及び業務車両などの動産等を賃借しております」。

連結財政状態計算書を見ると、自社で所有している土地は119億86百万円。総資産5,185億49百万円の2.3%でしかない。3,099店を回している会社が、土地をほとんど持っていない。

この記事は、その一点から会社の形を読み直す試みである。結論を先に書いておくと、すかいらーくは床を持たない会社である第5回で書いたイオンが床を所有する会社だったのに対して、この会社は床を借りて、その上に客席を並べている。そして借りているからこそ、できていることがある

すかいらーくホールディングスという会社の輪郭

大きなレストランの建物と、その周りに並ぶ形の違う系列店を見上げる家族

まず外側を測っておく。

東証プライム上場、決算は12月期。上場は2014年10月9日である。2025年12月期の売上収益は4,577億94百万円、営業利益は299億57百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は167億48百万円。会計基準はIFRSを採用している。

店舗数はグループで3,111店(2025年12月末・転換準備の未開店4店を含む)。コーポレート・ガバナンス報告書には「テーブルレストランを中心に約3,100店舗を展開、年間延べ約3.5億人のお客様にご利用いただいております」とある。従業員は6,744人、これに1日8時間換算の臨時雇用者が年間平均で40,615人。

親会社はない。政策保有株式もない。コーポレートガバナンス・コードは全原則を実施している。株主は448,046名(1単元以上・2025年12月31日現在)で、所有株式数の65.27%を個人が持つ。大株主に信託銀行が並ぶなかで、アサヒビール1.50%、麒麟麦酒1.47%、サントリー0.70%と事業会社が3社入っているのが目を引く。

「事業利益」と「営業利益」は別物である

この会社の数字を読むときは、先に用語を確かめておく必要がある。

会社の定義はこうだ。事業利益=売上収益−売上原価−販売費及び一般管理費営業利益=事業利益±その他の営業収益・その他の営業費用。そして会社は、事業利益・EBITDA・調整後EBITDA・調整後当期利益を「経営上の重要な指標」だと決算短信で明記している。

2025年12月期は事業利益329億87百万円、営業利益299億57百万円で、30億30百万円ちがう。中期経営計画の目標値は事業利益で置かれているので、会社の意思を読むときは事業利益を、他社と横に並べるときは営業利益を見ることになる。

決算期売上収益事業利益営業利益当期利益
2021年12月期2,645億70百万円△203億61百万円182億13百万円87億42百万円
2022年12月期3,037億5百万円△86億56百万円△55億75百万円△63億71百万円
2023年12月期3,548億31百万円164億20百万円116億88百万円47億81百万円
2024年12月期4,011億30百万円242億50百万円241億84百万円139億65百万円
2025年12月期4,577億94百万円329億87百万円299億57百万円167億48百万円

2021年に注意がいる。事業利益は203億61百万円の赤字なのに、営業利益は182億13百万円の黒字である。事業利益の外側にあるその他の営業収益が、この期に大きく効いている。要因の内訳は本稿では特定していない。ただ、「営業利益は事業利益より必ず小さい」という思い込みは、この会社では成立しないとだけ書いておく。

この会社は、階をひとつしか申告していない

形の違う店がすべて1つの箱に入り、箱には無地の札が1枚だけ結ばれている

ここからフレームを当てていくのだが、その前に断っておくことがある。

この会社の報告セグメントは、ひとつしかない。

有価証券報告書のセグメント情報を引く。

当社グループは、ガスト、バーミヤン、しゃぶ葉、ジョナサン、夢庵、ステーキガスト、資さん等の事業セグメントを有しており、「レストラン事業」として集約して報告しております。(中略)開示すべき報告セグメントが「レストラン事業」のみとなるため、記載を省略しております。

地域別も同じである。「外部顧客からの国内売上収益が、連結純損益計算書の売上収益の大部分を占めるため、地域別の売上収益の記載を省略しております」。海外の売上も、セグメント別の利益も、この会社は出していない。

これは開示が足りないという話ではない。会社は集約した理由を具体的に書いている。各ブランドは売上総利益率が概ね類似しており、テーブルサービスを提供する一般消費者向けビジネスという点で共通し、食材の調達、加工、調理及び店舗への配送方法も基本的に共通している——だから、ひとつの商売として報告する。

第5回のイオンは9セグメント、第2回のコロワイドは子会社名ベースの6区分だった。すかいらーくは1つ。同じ「人が食べるものを売る会社」で、開示の粒度がここまで違う。

したがって、以下で私が1階・2階と呼ぶものは、すべて当ブログの整理である。

本記事の1階・2階の区分は、当ブログが事業の性質から独自に整理したものであり、すかいらーくホールディングスが開示している報告セグメントの区分とは異なります。同社の報告セグメントは「レストラン事業」1つに集約されており、セグメント別の収益及び業績は有価証券報告書・決算短信のいずれでも記載が省略されています。

借りている床——駐車場も、席も

建物と駐車場を丸ごと載せた一枚の床。角にレンタルのリボンが結ばれている

階を数える前に、階が載っている床を見る。第5回でこれを躯体と呼んだ。1階と2階を載せている床そのもののことである。

すかいらーくの床は、借り物である。それも、ほとんど全部が。

有価証券報告書の「主要な設備の状況」に、こう注記されている。「店舗数の( )は、賃借している物件数を示しております。土地のみを賃借している物件は46店舗、建物及び土地を賃借している物件は2,878店舗です」。国内子会社の店舗は合計2,938店だから、実質的に全店が借りている計算になる。

それが貸借対照表にそのまま出る。

2025年12月末帳簿価額総資産比
土地(自社所有)119億86百万円2.3%
建物及び構築物761億53百万円14.7%
機械装置及び運搬具125億58百万円2.4%
工具器具及び備品60億1百万円1.2%
建設仮勘定12億50百万円0.2%
使用権資産1,222億61百万円23.6%
有形固定資産 合計2,302億8百万円44.4%

有形固定資産の53%が使用権資産である。借りている床を、資産として計上したものだ。内訳は土地249億45百万円、建物及び構築物943億17百万円。自社所有の土地119億86百万円の、2倍の土地を借りている。

負債側も対称になる。

2025年12月末金額
社債及び借入金1,236億69百万円
リース負債1,239億61百万円

銀行から借りている金額と、これから払う家賃の総額が、ほぼ同じである。この会社の有利子負債の半分は、床を借りていることから生まれている。会社が使うネット・レバレッジ・レシオ(純有利子負債÷調整後EBITDA)は2.5倍で、5期を並べると2.6→3.9→2.6→2.7→2.5と、コロナ期を除けば安定している。

いちばん大きい資産は、買ってきた名前

では、この会社の最大の資産は何か。土地でも建物でもない。

のれん1,626億83百万円と、商標権144億95百万円。合わせて1,771億78百万円。総資産の34.2%である。

のれんは、会社を買った値段のうち個別の資産では説明がつかない部分。商標権は、買ってきたブランドの名前そのものの値段だ。2024年1月に1,417億90百万円だったのれんは、資さん等の取得で165億18百万円、翌年のマレーシア子会社の取得で56億84百万円積み上がっている。商標権にいたっては、2024年初に1億10百万円しかなかったものが148億71百万円(取得原価)になった。

床は借りる。名前は買う。これがこの会社の資産の作り方である。

イオン(第5回)すかいらーく(本稿)
報告セグメント9区分1つ(記載省略)
所有(総賃貸面積680万㎡)賃借(建物及び土地2,878店・土地のみ46店)
最大の資産の性格有形固定資産(モール)のれん+商標権 総資産の34.2%
優待の載り方自社アプリiAEONに統合別ドメインの電子チケット

1階——3,099店の客席

席が奥まで並ぶ店内。テーブルを片付けて次の客を通すスタッフと、家族連れ

借りた床の上に何が載っているか。1階は、国内のレストランである。

ブランド店舗数ブランド店舗数
ガスト1,226フロプレステージュ118
バーミヤン370資さんうどん101
しゃぶ葉327じゅうじゅうカルビ44
夢庵173台湾89
ジョナサン157すき屋(マレーシア)18
むさしの森珈琲83Chawan30
ステーキガスト70とんから亭23
その他270
合計3,099

2026年3月末の数字である。国内子会社の店舗は2,938店で、うち首都圏が1,482店。ガスト1ブランドでグループ店舗の約4割を占める(1,226÷3,099=39.6%・筆者計算)。2位のバーミヤンの3倍以上だ。

1階は、いま調子がいい。2025年12月期の既存店売上高は前年比107.5%。内訳は客数+2%、客単価+6%である。売上総利益率は66.7%で前年から0.7ポイント下がったが、会社は「一部メニューの値上げによる粗利益率の改善や、店舗での食材ロスの低減、部門横断の原価低減プロジェクト」で価格高騰を一定程度抑えたと説明している。

面白いのは、この会社が設備投資で何を増やそうとしているかである。有価証券報告書の「重要な設備の新設」の表には、投資予定金額と着手・完了予定年月に並んで、こういう列がある。

完成後の増加能力(客席数)。

この会社が投資で増やすものは、客席である。2025年の設備投資は247億81百万円(使用権資産の取得を除く)で、新規出店77店、業態転換36店、店舗改装223店に使われた。

そして席が増えれば、次は回転である。2025年の説明で会社はこう書いている。「DX活用によるテーブル片付け時間(クリーンアップタイム)の可視化と短縮などオペレーション改革を徹底し、ピーク時の回転率向上と機会損失の抑制に努めました」。クリーンアップタイムとは、前の客が帰ってから次の客が座るまでの時間のことだ。

ここに、ひとつ緊張がある。会社の理念は「安くておいしい料理を、気持ちのよいサービスで、快適な空間で味わっていただく」である。快適な空間とは、要するにゆっくりできることだ。一方で施策は回転率の向上を掲げる。ゆっくりできることと、待たずに入れることは、同じ床の上で競合する。

これは矛盾ではない。席を売る商売がずっと抱えてきた条件である。ただ、客としての私が価値だと思っていたものが、経営指標としては両側から引っ張られているのだということは、知っておいてよかった。

2階——同じ床の上に、違う看板を載せる

同じ建物の看板だけを、別の形の無地の看板に差し替えている手

2階に置くのは、1階とは別の収益領域で、すでに数字が出ていて、伸びているものである。この会社の場合、それは買ってきたブランドになる。

取得ブランド店舗数の動き
2024年10月資さんうどん(㈱資さん)74店 → 94店(2025年12月末)→ 101店(2026年3月末)
2025年1月すき屋(マレーシア・CCグループ)13店 → 18店(2026年3月末)
2026年4月しんぱち食堂(㈱しんぱち)110店 → 131店予定(2026年10月末)

マレーシアの「すき屋」は、ゼンショーホールディングスの「すき家」ではない。ムスリム向けのしゃぶしゃぶ店を展開する現地グループを、2025年1月に取得したものである。表記は開示のとおり「すき屋」とした。

このシリーズでは、2階かどうかを4つの確認で判定している。当ててみる。

確認判定根拠
会社が経営戦略の柱として1階と分けているか中期事業計画の4本柱に「M&A推進」が独立(3年で3〜5件程度)
成長率が1階と明確に違うか既存店が年+8%に対し、資さんは1年半で74→101店
顧客・市場・収益モデルのいずれかが違うか市場は違う(うどん専門/ハラール/干物定食)が、収益モデルとオペレーションは会社自身が「共通」と説明している
資源を別枠で配分しているかM&A枠として中計に計上。のれん・商標権として別建てで資産計上

3つ以上あてはまるので、2階と置く。ただし3つ目が弱いことは書いておきたい。会社は「同じ商売だ」と言っているものを、私は「別の階だ」と言っている。そこは読者に見えている必要がある。

この2階は、1階と同じ床の上にある

そして、もっと大事なことがある。

2026年第1四半期の店舗開発の内訳を見ると、業態転換が14店ある。会社の説明は「業態転換は『資さんうどん』『しゃぶ葉』中心に14店舗」。資さんうどん101店のうち7店は、この四半期の転換分で増えている。

買ってきたブランドは、新しい床の上に建っていない。すでに借りている床の看板を架け替えて増えている。

会社2階が建っている場所
Amazon の AWS別の床(データセンター)
コロワイドMD別の商売(卸。外部売上35億円)
イオンのツルハ・キャンドゥ自社で所有する躯体の上
すかいらーくの資さん・すき屋1階と同じ、借りた床の上

建て増しではない。看板の架け替えに近い。そしてそれは、床を借りているからできることでもある。所有していれば、その土地に合わない業態へは簡単に振り替えられない。

コロワイドを「階を買う会社」と呼んだが、すかいらーくも階を買っている。ただし買っているものが違う。コロワイドは会社を買って、上場子会社として残す。すかいらーくはブランドを買って、自分の床に載せる。

ブランドを分けて、また畳む——この会社の癖

ブランドを出し入れするのは、いま始まったことではない。有価証券報告書の沿革を読むと、この会社の癖が見える。

ブランド子会社として設立株式公開合併(上場廃止)
ジョナサン(旧・サンボ)1979年5月1986年8月 店頭登録2012年1月
藍屋1985年12月1988年8月 店頭登録 → 1993年12月 東証二部2000年7月
バーミヤン1987年12月1997年7月 店頭登録1999年7月

ブランドごとに会社を作り、別々に上場させ、そしてまた1つに畳んでいる。いま店の看板として並んでいるジョナサン、藍屋、バーミヤンは、かつてそれぞれ独立した上場企業だった。

だから資さんやすき屋やしんぱちは、この会社にとって新しい手ではない。外から買ってくるようになった、というだけの違いである。器は昔から同じで、そこに載せる看板を、作ったり買ったり畳んだりしてきた。

3階——見当たらない。それは欠点か

まだ何も建っていない、明るい空の下の平らな屋上に立つ家族

3階の条件は2つある。まだ収益になっていないこと。そして、既存事業の延長ではないこと。1階・2階の蓄積を使って、別の役割・別の産業へ踏み出すものを指す。

この基準で開示を探すと、両方を満たすものが見つからない。

候補まだ収益になっていない別の産業へ
海外(台湾89店・マレーシア18店)× すでに店がある× 同じ商売を違う市場へ
垂直統合サプライチェーン×× 1階の原価低減
DX(ダイナミッククーポン、スポットクルー、CU時間短縮)×× 1階の効率化

海外については、第3回のカッパ・クリエイトで同じ判断をしている。海外回転寿司は2階の延長であって3階ではない、と書いた。すかいらーくの台湾・マレーシアも同じである。しゃぶ葉やむさしの森珈琲を海外に出すのは、同じ商売の横展開だ。

これを欠点として書くつもりはない。外食業で3階を建てるのは、そもそも難しい。店を出して料理を売る以外の稼ぎ方は、簡単には作れない。テック企業のようにソフトウェアの上に別の商売を短期間で建てられる業種とは、資産の性格が違う。3階を持っている外食企業のほうが例外である。

むしろこの会社は、3階を建てないかわりに2階を買っている。そして買った2階を、既存の床に載せて回している。中期経営計画の4本柱のうち3つ(新規出店・海外展開・M&A推進)が、すべて「床の上に何を置くか」の話なのは、そういうことだと思う。

車の店から、電車の店へ

左に駐車場のある郊外の店、右に駅の中の店。道が左から右へつながっている

ここまでで、床を借りることの意味を書いてきた。その効き目がいちばんはっきり出ているのが、出店の場所である。

出店比率2019年実績2026年計画
ロードサイド78.1%12.0%
大都市私鉄沿線12.5%34.0%
ショッピングセンター6.3%34.0%
高度商業集積地3.1%8.0%
地方都市駅前12.0%

7年で、出す店の重心が郊外の道路沿いから、駅と商業施設へ移っている。会社は既存ブランドだけで大都市私鉄沿線に857店、ショッピングセンターに521店、地方都市駅前に126店、合計1,504店の出店余地があると見ている。

ここで数字の読み方に注意がいる。これは新しく出す店の構成比であって、既存店舗の構成比ではない。2026年3月末でもガストは1,226店、バーミヤンは370店ある。店舗の実体は、いまも郊外型が主である。

そのうえで、この付け替えの速さは、床を借りているから可能になっている。土地を所有していれば、郊外に持っている資産は郊外にあり続ける。売らないかぎり動かない。借りているなら、契約の満了とともに別の場所へ移れる。2019年に78.1%だった構成を、7年で12.0%まで振り替えられるのは、そこに理由がある。

イオンは逆である。あの会社は床を持ち、その床の上に自分の店とテナントを載せ、さらにリートに売っては借り戻して回している。床を持つ会社は、床を動かさない。床を借りる会社は、床を動かす。どちらが優れているという話ではなく、資産の持ち方が戦略の可動域を決めている。

そして個人的なことを書けば、私はこの流れとちょうど反対の方向に動いた。電車の生活から車の生活に移って、この会社の店に通うようになった。会社は、その車の店から離れようとしている。

因果関係はない。無関係な2つの移動が、たまたま逆を向いているだけである。ただ、自分が客になった理由と、会社がこれから客を迎える場所が、こんなにきれいにすれ違っていることは、決算資料を読むまで知らなかった。

株主にとって、この構造は何を意味するか

食卓に並ぶ小・大・中の無地カード。優待が膨らんでから縮んだことを示す家族の食事

株主として受け取ってきたものから見ていく。

優待は、3倍になって、半分になった

この会社の優待は、9年のあいだに2回動いている。金額の変更はどちらも適時開示に載っているので、そのまま並べる。

適用開始100株・年間1,000株・年間開示
2017年6月末基準日の前2,000円23,000円
2017年6月末基準日〜6,000円69,000円2017年2月9日「一部変更(拡充)」
2018年6月末基準日〜6,000円69,000円2018年5月10日「仕様変更(カード化)」
2020年12月末基準日〜4,000円34,000円2020年9月10日「変更」
2025年9月発送分〜4,000円34,000円電子チケット化

2020年の減額について、会社は理由をこう書いている。

このたびの新型コロナウィルスの影響により不透明な経営環境が続く中、当社では持続的成長の追求を優先事項ととらえ、収益構造改革の一環として株主優待制度のあり方を慎重に検討した結果、株主優待制度を変更した上で継続させていただくことといたしました。

私はこの年、この株を一度手放している。第5回に書いたとおり、2020年3月に保有株のほとんどを現金化した。個別の会社を見て売ったのではなく、市場全体が読めないなかで手元に現金を置く必要があった。すかいらーくもその中に入っていた。そして同じ年のうちに買い直している。その数か月後に、優待は半分になった。

順番はこうだった、というだけの話である。売り買いと減額のあいだに関係はない。

優待コストは、営業利益の6.0%

いまの制度で、会社はどれだけ負担しているのか。

株主は448,046名(1単元以上)。全員が最低区分の100株だと仮定して年間4,000円を掛けると、約17.9億円になる。営業利益299億57百万円に対して6.0%、事業利益329億87百万円に対して5.4%である。上位区分の株主がいるぶん実際はこれより大きくなるので、これは下限の推定になる。

会社は優待費用の総額を開示していない。ただし株主優待引当金は計上していて、2025年12月期の当期増加額は13億28百万円である(有価証券報告書の引当金明細表)。額面ベースの下限推定17.9億円との差が何を表すのかは、開示からは読み取れない。利用率なのか、失効なのか、計上の基準なのかは、書かれていない。

どちらの数字で見ても、この優待は利益に対して重くない。このシリーズで見てきたなかでは、優待コストが事業利益を上回っていたカッパ・クリエイトとは対照的である。1階が強いから、手厚い優待が続いている、というより、2020年に一度重さを調整したから、いまの水準で続いていると読むほうが記録には合う。

なお有効期限は約1年で、3月発送分は翌年3月31日まで、9月発送分は翌年9月30日まで。私は10年で12万円分の優待を期限切れで失った記録を書いたことがあるが、電子チケットになってからは残高が画面で見えるので、この失敗はしにくくなった。ただししんぱち食堂とフロプレステージュでは使えない。買ってきたブランドが優待の器に載るまでには、時間差がある。

配当は、資本剰余金から出ている

2025年12月期の配当は年間22円(中間8円・期末14円)、配当金総額50億5百万円、配当性向29.9%。会社は「調整後当期利益ベースで約30%の連結配当性向」を目標に掲げている。2026年12月期の予想は26円である。

その決算短信に、こういう注記がある。「2025年12月期期末の配当原資には、資本剰余金が含まれております」。中間8円・18億20百万円、期末14円・31億85百万円。純資産減少割合は0.000と記載されている。

周辺の事実を並べておく。提出会社単体(日本基準)の当期純損益は2025年12月期が29億76百万円の損失で、単体の販管費にはのれん償却額73億87百万円が計上されている。IFRSの連結ではのれんを償却しないが、単体の日本基準では償却する。この2つが同時に成り立っている、というところまでが開示から読めることである。

ここから先の解釈は書かない。会社はその理由を説明していないからだ。事実として言えるのは、連結では過去最高益を出しながら、配当の原資には資本剰余金が使われている、ということである。株主総利回りは2025年で214.4%(配当込みTOPIXは213.2%)だった。

ROEはすでに、2027年の目標レンジに入っている

会社は資本コストをCAPMベースで概ね7%と推計したうえで、グローバル投資家の期待値を考慮して保守的に8%と仮定している。そのうえでROEは「資本コストの8%を最低目標とし、2027年度に9〜10%の達成を目指す」。分解目標はROA4.4〜4.9%、財務レバレッジ2.04〜2.06倍。信用格付はシングルA水準の維持を掲げている。

2025年12月期の親会社所有者帰属持分当期利益率は9.3%目標レンジには、すでに入っている。

株主として見ておくべきリスクは、この構造の裏側にある。床を借りているということは、賃料が上がれば効くということである。リース負債1,239億61百万円は、これから払う家賃の総額を割り引いたものだ。金利の上昇も、社債及び借入金1,236億69百万円の側に効く。会社が有価証券報告書のリスク欄で「多額の借入金」と「多額の有形固定資産とのれん」を並べて挙げているのは、そういうことだろう。

直近のイベント——3年計画を、2年で追い越した

目印のリボンを追い越して先へ進んでいる店の並びと、並んで歩く家族

中期事業計画は2025年から2027年の3年間で、最終年度が2027年12月期である。その進捗が、少し変わったことになっている。

中計目標(2027年)2025年実績2026年ガイダンス
売上高4,600億円4,578億円(99.5%)4,900億円
事業利益340億円330億円(97.1%)360億円
営業利益320億円300億円(93.8%)335億円

2026年のガイダンスが、2027年の目標を3指標とも上回っている。会社自身が決算説明会資料に「中期事業計画は1年前倒しで達成予定」と書いた。

2026年12月期の第1四半期も、売上収益1,212億63百万円で前年同期比+8.6%、事業利益90億89百万円で+10.6%、営業利益89億10百万円で+17.0%と伸びている。通期のガイダンス前提は既存店売上105%、客数102%、新規出店70店、業態転換50店である。

2026年4月にはしんぱち食堂を取得した。干物と焼魚の定食業態で、110店が加わり、2026年10月末には131店(うち海外1店)へ拡大する計画。会社は2030年に300店以上、海外展開も視野に入れると書いている。海外初進出は2026年6月の台湾(天母大葉高島屋店)だった。

もうひとつ、決算の読み方に関わる予定がある。2027年12月期からIFRS第18号が適用される。損益計算書に営業・投資・財務の3区分と新しい小計が導入され、「経営者が定義した業績指標(MPMs)」の説明開示が要求され、監査の対象になる。この会社が重要指標と位置づけている事業利益は、まさにその会社独自の指標である。会社は影響を「検討中」としており、何かを表明したわけではない。ただ、この会社の数字を追う人間としては、頭に入れておく事項ではある。

おわりに——あの駐車場は、誰のものだったのか

1枚目と同じ駐車場と同じ店。女の子は前の場面と同じ年頃で、家族と歩いている

私がこの会社の客になったのは、料理が理由ではなかった。

車を止められること。待たずに座れること。ゆっくりできること。子どもが小さい時期に、その3つが揃っている場所は貴重だった。私が買っていたのは、駐車場と、席と、時間である。

そして有価証券報告書を読むと、その3つがそのまま書いてある。リースの対象には「土地、建物及び駐車場」とある。設備投資で増やす能力の単位は「客席数」である。経営理念の実現は「快適な空間で味わっていただく」ことだと書いてある。会社は、自分が何を売っているかを正確に書いていた。

ただし、そのどれも会社の持ち物ではない。駐車場も、店の土地も、借りている。自社で持っている土地は総資産の2.3%しかない。そのかわりに、総資産の34.2%をブランドの値段が占めている。床は借りて、名前は買う。それがこの会社の形である。

床がないのではない。持っていないだけで、床はある。以前この会社の株主優待を書いたとき、私は電子チケットが自社アプリに統合されないことを「サイロ化」と呼び、第5回では「載せる床がなかった」と振り返った。いまは少し言い方を変えたい。この会社は、床を持たないことを選んだ会社である。そしてそのぶん、床の上に何を載せるかを速く変えられる。看板は架け替えられ、出店の重心は7年で郊外から駅前へ移った。

私が車で通うようになった郊外の店は、これから新しくは増えにくい。会社が出す店は、駅と商業施設へ寄っていく。

ただ、変わらなかったものもある。

あのころ「ジョナサンに行こう」と言っていた子どもは大きくなって、いまは「藍屋に行こう」と言う。店の名前は変わったが、行き先はこのグループの中にある。

この2つは、もとは別々の会社だった。どちらもすかいらーくが作って、上場までさせて、また自分のなかへ畳んだ店である。そんなことを、うちの子は知らない。あの店のごはんが好きだというだけだ。

ついでに書いておくと、藍屋は店舗数の一覧に名前が出てこない。「その他」に入っている。わが家で名指しされる店は、開示のうえでは「その他」である。

看板が架け替わっても、客は同じ床の上にいる。会社が業態転換でやっていることと、家族の好みが移っていくことは、たぶん同じ形をしている。

買った年に優待は3倍になっていて、数年後には半分になった。それでも子どもは、行こうと言う。

借りた床の上で起きた、9年ぶんの話である。

FAQ

すかいらーくの株主優待はいくらもらえますか

年間合計で、100〜299株が4,000円、300〜499株が10,000円、500〜999株が16,000円、1,000株以上が34,000円です。6月末と12月末の年2回に分かれるため、1回あたりはそれぞれ2,000円、5,000円、8,000円、17,000円になります。6月末基準日の分は9月中旬頃、12月末基準日の分は3月中旬頃に発送されます。有効期限は約1年で、3月発送分は翌年3月31日、9月発送分は翌年9月30日までです。

すかいらーくの株主優待はグループのどの店で使えますか

すかいらーくレストランツ、ニラックス(ビュッフェ業態の一部店舗を除く)、トマトアンドアソシエイツ、資さんの4社が運営する店舗で使えます。2026年4月にグループへ加わったしんぱち食堂と、フロプレステージュを運営するフロジャポンの店舗では使えません。売店商品、宅配サービス、通販商品も対象外です。電子チケットは税込価格から額面の範囲で1円単位の割引となり、残高を家族や友人へ贈ることもできます。

すかいらーくは店舗の土地を持っていないのですか

ほとんど持っていません。第15期有価証券報告書によれば、建物及び土地を賃借している物件が2,878店舗、土地のみを賃借している物件が46店舗あります。自社で所有する土地の帳簿価額は119億86百万円で、総資産5,185億49百万円の2.3%です。借りている床を資産計上した使用権資産は1,222億61百万円で、有形固定資産の53%を占めます。リースの対象には駐車場も含まれます。

事業利益と営業利益は何が違うのですか

会社の定義では、事業利益は売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いたもの、営業利益は事業利益にその他の営業収益・営業費用を加減したものです。2025年12月期は事業利益329億87百万円、営業利益299億57百万円で30億30百万円の差があります。会社は事業利益を経営上の重要な指標と位置づけ、中期経営計画の目標値も事業利益で設定しています。なお2021年12月期は事業利益が赤字で営業利益が黒字という逆転が起きています。

すかいらーくのセグメント別業績はどこで見られますか

開示されていません。同社の報告セグメントはガスト、バーミヤン、しゃぶ葉などを「レストラン事業」1つに集約しており、開示すべき報告セグメントが1つのみとなるため、有価証券報告書・決算短信ともにセグメント別の収益及び業績の記載を省略しています。地域別の売上収益も、国内が大部分を占めることを理由に省略されているため、海外の売上高や利益も公表されていません。

日本株シリーズ(連載中)

保有する日本株を、1〜3階のフレームで1社ずつ読み解く連載です。

米国株シリーズ(全9回)

参考リンク


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