イオングループの上場株の地図と、優待4社の四社四様【日本株シリーズ第20回】

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はじめに——四つの封筒と、一枚の地図

四つの封筒と箱の中央に広げられた一枚の地図のイラスト

うちには、イオン系の会社から年に何度も封筒や箱が届く。イオン九州の分厚い優待券。イオン北海道の薄い優待券。マックスバリュ東海のお米の箱。フジの優待券と、秋の新米。同じ親を持つ会社の株を4社「コンプ」しているからで、第16回から4回かけて、その1社ずつを個別記事で読んできた。

読み終えて分かったのは、同じ親の子でも、四社四様だということだ。優待の厚さは100株・年間で4倍違う。上場維持基準をめぐる開示は3社それぞれで形が違い、フジだけは売る側にいた。利益率も、親の議決権も、上場市場もばらばらだった。

この回は個別記事の続きではない。4本で確かめたことを1枚に並べる横断比較の回である。あわせて、「そもそもイオングループの上場株には何があるのか」の地図と、どの会社の券でも共通する使い勝手(生活術)をここに置く。個別の深掘りは各記事に譲り、本稿は比べることに徹する。

イオングループの上場株の地図

地図にピンを立てたり箱にしまったりするようすのイラスト

対象の定義と基準日

まず地図の描き方を決める。手順は3段である。第1段: 候補の抽出——イオン(8267)の有価証券報告書・第101期(EDINET)は、グループを「当社(純粋持株会社)及び312社の連結子会社、21社の持分法適用関連会社」(逐語)とし、そのうち有価証券報告書の提出会社として連結子会社14社と、持分法側の3社・1法人を注記している。この18法人+親イオンを候補にした。第2段: 上場の突合——候補の1社ずつを、JPXの東証上場銘柄一覧2026年7月末版)で「いま上場しているか・どの市場か」の両面から確かめた(札幌証券取引所の重複上場は札証の公式上場会社一覧で確認)。有報に名前があることと、いま株が買えることは別の話だからだ。第3段: 優待の確認——上場が確認できた各社の公式ページを2026年8月26日に見て、優待制度の確認状態を記録した。基準日はこの2つ(JPX一覧=2026年7月末・優待確認=2026-08-26)である。

いま上場している会社

1つの表にまとめる。関係区分ごとに、区分内は証券コード順。確認日はいずれも2026-08-26、出典は表下の凡例で示す。

法人名コード証券種別市場関係区分親の議決権(直接/間接/合計)優待制度の確認状態確認日出典
イオン8267株式プライム親会社―(親自身)公式で現行確認(オーナーズカード等・第5回)2026-08-26②③
イオン九州2653株式スタンダード連結子会社合計70.18%(内訳は未確認)公式で現行確認(第16回で深掘り)2026-08-26①②③④
キャンドゥ2698株式スタンダード連結子会社公式に優待案内あり2026-08-26②③
U.S.M.H3222株式スタンダード連結子会社公式に優待ページあり2026-08-26②③
ツルハHD3391株式プライム連結子会社公式に優待ページあり2026-08-26②③
イオンファンタジー4343株式プライム連結子会社公式に優待ページあり2026-08-26②③
イオン北海道7512株式スタンダード+札証連結子会社直接65.67・間接1.56・合計67.23%公式で現行確認(第17回で深掘り)2026-08-26①②③④⑦
マックスバリュ東海8198株式スタンダード連結子会社合計64.55%(内訳は未確認)公式で現行確認(第18回で深掘り)2026-08-26①②③④
フジ8278株式プライム連結子会社合計51.49%(内訳は未確認)公式で現行確認(第19回で深掘り)2026-08-26①②③④
イオンフィナンシャルサービス8570株式プライム連結子会社優待制度なし・200株以上にイオンラウンジ会員証2026-08-26②⑤
コックス9876株式スタンダード連結子会社公式に優待ページあり2026-08-26②③
ミニストップ9946株式プライム連結子会社公式に優待ページあり2026-08-26②③
メディカル一光グループ3353株式スタンダード持分法適用関連会社公式未確認・二次で廃止報道(2015年)2026-08-26②⑧
ベルク9974株式プライム持分法適用関連会社公式に優待ページあり2026-08-26②③
やまや9994株式スタンダード持分法適用関連会社公式で廃止確認(2025年3月分で終了)2026-08-26②⑥
イオンリート投資法人3292投資口REIT市場持分法適用関連会社対象外(分配金は優待ではない)2026-08-26

凡例: ①=各社の支配株主等に関する事項・有報(議決権の一次)/②=JPX東証上場銘柄一覧2026年7月末版(市場・上場の確認)/③=各社公式の株主優待ページ(巻末リンク)/④=本シリーズ個別記事/⑤=イオンフィナンシャルサービス公式FAQ/⑥=やまや公式・優待廃止の案内/⑦=札証公式上場会社一覧/⑧=二次報道(廃止の公式一次は未確認)。

議決権の直接・間接の内訳は、個社開示で内訳まで確認できた北海道のみ記載した(他3社は合計のみ確認)。「―」は本稿で個社の一次開示まで確認していないという意味であり、0%やゼロ関係ではない(連結子会社・持分法の区分自体がイオン有報による)。優待の「あり」の中身には本稿は立ち入らない——深掘りは個別回の仕事である。

再編で消えた上場

この地図は、1年前には描けなかった形をしている。イオンの有報の注記(逐語)によれば、イオンモールが2025年6月27日付、イオンディライトが2025年7月17日付、ウエルシアホールディングスが2025年11月27日付、サンデーが2026年4月1日付で、それぞれ上場廃止となった。さらに有報の後、ジーフットが2026年6月23日付で上場廃止となっている(完全子会社化に伴うもので、同社の株主優待も廃止された)。一方で2026年1月にはツルハホールディングスが子会社に加わった(有報沿革・逐語)。

つまりこの地図は生きて動いている。買える株のリストとしては、日付とセットでしか意味を持たない——本稿の基準日は上記のとおりである。

優待の四社四様

同じトレーに違う中身が並ぶ四つの優待のイラスト

比較の条件

ここからが本題の横断比較である。対象は、共通の型の「株主様ご優待券」(100円券)を発行する4社——イオン九州・イオン北海道・マックスバリュ東海・フジ。以下の表は、100株・年間・共通型の紙の優待券を選んだ場合の比較で、2026-08-26に各社の優待ページで確認した(フジのBコース3,000円相当や東海の商品コースを含めた「制度全体の順位」ではない)。

項目九州北海道東海フジ
権利確定年2回(2・8月末)年1回(2月末)年1回(2月末)年1回(2月末)
100株・年間の券額面10,000円相当2,500円分5,000円分6,000円分(A選択時)
選択制なしなしあり(お米などのコースか優待券)あり(優待券・ポイント・特産品)
イオンラウンジ100株500株100株ページに記載なし
長期優待ページに記載なし500株以上・3年超(ギフトカード)ページに記載なし300株以上・1年以上(新米)

(表の確認日はいずれも2026-08-26)「ページに記載なし」は、廃止や非実施の確定ではない——取得日時点の公式ページに記載が見当たらなかった、という事実である。

眺めて分かること

券の額面は九州が突出し、北海道はその4分の1。回数も九州だけ年2回。ところが選択制は東海とフジにしかなく、お米や特産品という「券以外」の楽しみはこの2社にある。ラウンジの敷居は北海道だけ500株と高い。長期優待は北海道が金券、フジが新米と、方向が違う。

なぜこう違うのかを、本稿は説明しない。各社の開示に説明がないからだ。個別記事で確かめたのは、この差が「事実として存在し、近年の制度変更でも埋まらなかった」ことまでである——北海道が2023年に優待を増額したときも、100株の帯は開示の逐語で「変更ありません」だった(第17回)。

上場維持基準をめぐる三社の開示——九州・北海道・東海

同じ高さのバーを異なる方法で越える三人のイラスト

4社のうち3社は、東証スタンダード市場の上場維持基準「流通株式比率25%以上」を満たしていない時期があった。親が6〜7割を握る上場子会社の、構造的な宿題である。3社の開示を時系列で並べる。それぞれ別々の開示であり、因果で束ねる言葉はどの開示にもない。

九州——優待変更と売出が、2年の時系列に並ぶ

2024年7月23日に優待の年2回化(目的は「中長期的に当社株式を保有していただくこと」「投資魅力をさらに高めるため」の逐語)。2025年11月に事業法人等8社による180万株の売出(こちらは流通株式比率の「基準達成を目指すための取り組み」と明記)。2026年3月25日に適合を開示。詳細は第16回

北海道——同じ日に、2つの開示が出た

2023年1月20日、優待の増額・長期優待の導入(「お客さま株主」目的の逐語・100株帯は据え置き)と、イオン・北洋銀行・北海道銀行など5者による1,610万株の売出(「基準達成を目指す」の逐語)が同日に開示された。その後の適合を確認する開示は、本稿では確認していない。詳細は第17回

東海——親から買って、消した

2021年12月に自己株式の公開買付けを決議し、親イオンが450万株の応募意向。2022年1月に取得を終え、2022年2月に450万株(発行済の12.34%)を消却した——理由は「流通株式比率の向上を図るべく」(逐語)。2023年5月30日に適合を開示。市場に新しい株は出ていない。詳細は第18回

フジは、売出人の側にいた

フジは唯一のプライム上場で、この3社の並びには入らない。代わりに、九州の売出の売出人リストに登場する——保有していたイオン九州株525,300株の全部を「資産の効率化及び財務体質の強化」(逐語)を理由に売却した。同じグループの中で、基準を満たしにいく側と、持ち株を手放す側が、1つの売出ですれ違っている。詳細は第19回

数字で並べる——利益率と議決権

高さの違う四本の柱を眺めるキャラのイラスト

営業収益営業利益率の4社表

2026年2月期を、営業収益分母でそろえて計算した(筆者計算。原数値は各社の決算短信——イオン九州イオン北海道マックスバリュ東海フジ。北海道は非連結のため営業収益を売上高+営業収入で構成)。

営業収益営業利益利益率親の議決権市場
マックスバリュ東海3,849億円135.6億円3.52%64.55%スタンダード
イオン北海道4,043億円83.3億円2.06%67.23%スタンダード
イオン九州5,471億円107.5億円1.96%70.18%スタンダード
フジ8,142億円112.2億円1.38%51.49%プライム

規模が最も小さい東海の利益率が最も高く、規模が最も大きいフジが最も薄い。優待が最も厚い九州は、親の議決権も最も厚い。表のどの列を並べ替えても順位が入れ替わる——四社四様とは、そういう意味である。順位の背景を本稿は推測しない。各列の深掘りは個別記事にある。

親イオンという参照枠

親のイオン(8267)はこの表に入れない。純粋持株会社であり、地域小売4社と営業収益の意味が違うからだ。親の側から見たグループの構造——スーパーが赤字でもモールと金融が支える「躯体」の話——は第5回で読んだ。4社の株主にとっての親は、比較対象ではなく、優待券が使える売場の網と、次に述べるオーナーズカードの発行元である。

優待券の使い勝手

財布から色違いの優待券を出して使う手元のイラスト

券の仕様と使い方

4社の「株主様ご優待券」は、どれも100円券で、1回のお買上げ1,000円(税込)ごとに1枚使える——この基本は4社共通である(各社ページの逐語で確認)。使い切れば実質10%オフ。レジで合計金額を千円単位に切り下げて1,000で割れば、出す枚数になる。セルフレジやスマホ決済のレジでは自分で読み取れないので、店員さんを呼んで渡す。

一方で、細部は社ごとに違う。有効期限は北海道が「発行後1年間」、東海とフジは「翌年6月30日まで」、九州はページに記載がない。支払方法や他の割引との併用は、北海道が「すべてのお支払方法で利用可・他のクーポン・割引券との併用も可能」と明記する一方、他社のページには明示がない。除外品目(酒・たばこ・切手・テナントなど)の書き方も社ごとに差がある。券は同じ顔をしているが、約款は1枚ずつ読む必要がある——本稿の確認日は2026-08-26で、最新の条件は各社ページで確かめてほしい。

相互利用の網

この券の最大の特徴は、発行した会社の店でなくても使えることだ。4社の優待ページはいずれも、全国のイオン・マックスバリュ・ザ・ビッグ・まいばすけっと・ダイエー・マルナカ・フジなど、グループ各社の直営売場を利用先に挙げる(利用先リストの社名は再編で変わる——たとえばマックスバリュ関東は2026年3月1日付でイオンフードスタイルへ商号変更している。確認日: 2026-08-26)。九州の株主が北海道のイオンで券を使える。北の薄い封筒と南の厚い封筒は、同じ財布に入る。

オーナーズカードとの併用

親イオン(8267)の株主にはオーナーズカードがある。保有株数に応じて100株以上=3%……ではなく、100株以上=1%・300株以上=3%・9,000株以上=7%の返金率で、半年ごとの買物額に対してキャッシュバックされる制度だ(第5回・一次)。優待券とオーナーズカードは併用できる売場が多く、うちの場合——3%の区分であることは第16回で書いた——券の使える会計では、生活実感として実質13%前後のオフになる。これは筆者のケースの話で、100株なら1%、率はご自身の区分で読み替えてほしい。

コンプという持ち方

うちが4社の株を持つのは、分散投資のためではない。1社から届く券では、うちの買物量に足りないからだ。必要な券の総量から逆算して、同じ網で使える券の発行元を順に揃えた——意図的な集中である。この持ち方は、券の相互利用網という仕組みの上で初めて成立する。そして忘れてはいけないのは、優待には配当方針のような会社の約束がないことだ。やまやの廃止(2025年)もジーフットの廃止(2026年・上場廃止に伴う)も、この地図の中で現に起きた。券がある暮らしは、続く保証のない暮らしでもある。

比較表の読み方と、個別記事への導線

一枚の地図と五冊の冊子がしおりで結ばれた机のイラスト

この回は、答えを出さないまま終わる。どの株を選ぶかに答えるのは本稿の仕事ではないからだ。代わりに、表の読み方だけ置いておく。

優待の表は「100株・共通型の券」という一つの条件で切った断面であり、選択制や長期優待まで含めれば別の断面になる。利益率の表は2026年2月期という一時点の断面で、来期には動く——フジは営業利益+51.5%の会社予想を出しており、その答え合わせは第19回で予告した。上場維持基準の章は、開示日・取引の形・適合確認の有無が3社それぞれで違う、という時系列の並びとして読む。そして地図は、1年で5社が消えた変化の速さごと眺めるものだ。

深掘りは5本の個別記事にある。親の構造は第5回、厚い封筒の九州は第16回、薄い封筒の北海道は第17回、お米とヤオハンの東海は第18回、統合途上のフジは第19回。四つの封筒は今年も届く。届くたびに、この地図に戻って現在地を確かめる——そのための1枚である。

※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

FAQ——イオングループの優待株を6問で確認

どの会社の株で、共通の優待券がもらえるか。

イオン九州(2653)・イオン北海道(7512)・マックスバリュ東海(8198)・フジ(8278)の4社が、相互利用できる型の「株主様ご優待券」(100円券)を発行している(東海とフジは券以外のコースも選べる選択制)。100株・年間の券額面は九州10,000円相当・フジ6,000円分・東海5,000円分・北海道2,500円分。

優待券はどこで使えるか。

発行4社の店に限らず、全国のイオン・マックスバリュ・ザ・ビッグ・まいばすけっと・ダイエー・マルナカ・フジなどグループ各社の直営売場で使える。4社共通と確認できたのは「100円券・1回のお買上げ1,000円(税込)ごとに1枚」まで。有効期限・併用条件・テナントや除外品目の扱いは社ごとに書き方が違うため、お手元の券の発行会社の優待ページで確認したい。

4社の違いを一覧で知りたい。

本文の2つの表にまとめた。優待は、回数は九州のみ年2回、額面は最大4倍差、選択制は東海とフジ、ラウンジの必要株数は公式ページで確認できた範囲で九州・東海100株に対し北海道500株(フジはページに記載なし)、長期優待の記載は北海道とフジのページにある(九州・東海はページに記載なし)——という四社四様。数字は「利益率は東海が最高でフジが最薄・議決権は九州が最厚でフジが最薄・市場はフジのみプライム」と、どの列でも順位が入れ替わる。

イオン本体(8267)と地域4社は、優待と事業構造がどう違うか。

本体の優待はオーナーズカード(保有株数に応じ買物額の1%・3%・7%を返金)で、地域4社の優待券(金額固定の100円券)とは仕組みが違う。事業も、本体は純粋持株会社としてモール・金融・小売を束ねる側、地域4社はスーパーの現場を持つ側である。両方を持つと、対象の売場では券と返金を併用できる場合があるが(適用範囲は売場・取引による)、制度の性格は別物として読む必要がある。

ウエルシアやイオンモールの株はもう買えないのか。

買えない。イオンの有価証券報告書の注記によれば、イオンモールは2025年6月27日付、イオンディライトは2025年7月17日付、ウエルシアホールディングスは2025年11月27日付、サンデーは2026年4月1日付で上場廃止となった。その後ジーフットも2026年6月23日付で上場廃止となっている。

有価証券報告書の「提出会社」と上場会社は同じですか。

違う。有価証券報告書は非上場でも提出義務を負う場合があり、イオンの有報が挙げる提出会社14社には、上場廃止後の会社や非上場の会社(オリジン東秀など)も含まれる。本稿の地図は、提出会社リストを出発点に、JPXの上場銘柄一覧(2026年7月末版)で「いま上場していること」を1社ずつ確かめて描いた。

日本株シリーズ(連載中)

筆者が実際に保有する日本の個別銘柄を、1社ずつ同じフレームで読み解くシリーズです。1階(収益基盤)・2階(成長エンジン)・3階(将来オプション)の3層で構造を分析し、決算のたびに答え合わせを重ねていきます。

米国株シリーズ(連載中)

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参考リンク