新NISAの生涯枠を回す「ところてん方式」――売却代金で積立を続ける

はじめに

窓辺の机に、ノートと証券口座の画面を開いたノートパソコン

2026年10月6日の夜、SBI証券のNISA画面を開いた。SBI・V・S&P500が、成長投資枠とつみたて投資枠に一行ずつ並んでいる。

取得価額は合わせて約970万円。評価額は約1,327万円。約357万円の含み益がある。毎月の買付は30万円で、成長投資枠に20万円、つみたて投資枠に10万円を置いている。

この画面を見て、NISAを「満杯になるまで触れない箱」と考えるのは違うと思った。私にとっては、増えた利益にも税金がかからず、必要なときに保有分を現金にできるお財布だ。資産の数字を大きくするだけでなく、いまの暮らしにも使える。

値上がりした保有分をいま一部売れば、かつて入れた元本と、その後に増えた利益の両方が現金になる。生活に使うことも、次の月々の買付代金にすることもできる。売った商品の取得価額の分だけ、翌年以降の生涯枠も空く。現金を取り出しながら、定額の積立を続けられる。

このまま買い続けると、月30万円を満額で入れられる最後は2028年12月。2029年1月には約20万円だけ入り、生涯枠の1,800万円に達する。だが、そこまで売却を待つ必要はない。一つの容器から、必要なときにところてんを押し出す。受け取った現金を使い、翌年以降、空いた入口からまた少しずつ入れる。容器の大きさは変わらない。

容器の大きさは変わらない

帳簿と卓上カレンダーと、水位の線がある瓶

入る量は取得価額で決まる

新NISAの非課税保有限度額は合計1,800万円。そのうち成長投資枠で保有できるのは1,200万円までだ。毎年買える額にも上限があり、成長投資枠240万円とつみたて投資枠120万円を合わせて360万円になる。金融庁の制度説明は、これらの枠を簿価、つまり買ったときの金額で数える。

私の画面では、約970万円の取得価額が容器を使っている。評価額は約1,327万円だが、値上がりした約357万円は容器の容量を食わない。評価額が1,800万円を超えたから売らなければならない、という仕組みでもない。2024年からのNISAは、非課税で持てる期間が無期限である。

空きは約830万円。月30万円なら、2026年10月から12月に90万円、2027年と2028年にそれぞれ360万円を入れられる。合計810万円。最後に残る約20万円が、2029年1月の端数になる。

押すと、翌年に空きができる

保有分を売ると、容器から出るのは売却代金の全額だ。ただし、翌年に再利用できる枠はその全額ではない。金融庁とSBI証券が示すのは、売った商品の簿価分が翌年以降に戻るという規則である。

たとえば時価100万円で売った商品の取得価額が73万円なら、手元に出る現金は100万円、翌年に空く生涯枠は73万円。残りの27万円は非課税で確定した利益として現金に含まれる。その27万円だけを別に投資枠へ足せるわけではない。

もう一つの上限も動かない。翌年に簿価が戻っても、年間に買えるのは合計360万円まで。私の月30万円は12か月でその額に届く。売却した商品を追加で一括して買い戻すなら、その年の月々の買付を減らす必要がある。

すでに持っている資産を現金へ移すと、使い道を自分で決められる。その現金を月々の買付に回せば、後の年にもNISAへ定額で入れていける。年間360万円という買付の上限はそのままだ。

押し出されるのは元本と利益

一つのNISA容器から元本と利益を含むところてんを押し出し、翌年、同じ入口へ戻すイラスト

時価360万円を売ると

成長投資枠にあるSBI・V・S&P500の一部を、いまの評価比率のまま時価360万円で売ると仮定する。概算では取得価額が約262万円、含み益が約98万円だ。

売却後、手元には360万円の現金がある。来年から空く生涯枠は約262万円。利益の約98万円は現金の一部だが、戻る枠には数えない。容器の外へ押し出されたものと、容器の中に生まれる空きは、金額が違う。

この差が、ところてん方式の要点になる。押し出した360万円は、生活費にも、待機資金にも、次の積立の支払いにも使える。新しく入れられる量は、残っていた生涯枠、翌年に戻る約262万円、そしてその年の年間投資枠で決まる。同じ360万円を三つの名前で呼んでいるわけではない。

現金を12か月に分ける

月30万円の買付代金に売却代金を充てるなら、360万円は12か月分に相当する。現金を一度に市場へ戻すのではなく、毎月30万円ずつ買う。基準価額が高い月には少ない口数、安い月には多い口数を買う。私が続けている定額買付のリズムは、そのまま使える。

売る金額を変えると、手元の現金が支えられる月数も変わる。成長投資枠の現在の評価比率を固定し、月30万円の買付代金に全額を充てると、こうなる。

売る時価現金に含まれる元本の概算現金に含まれる利益の概算月30万円の買付代金として
100万円約73万円約27万円3か月分と約10万円
200万円約146万円約54万円6か月分と約20万円
360万円約262万円約98万円12か月分

右端は現金の使い道を示している。翌年に戻る枠の金額は中央の元本の列であり、現金を使える月数とは別だ。利益を含む現金を時間に分けて使い、簿価の空きは後の買付を受け止める。この二つが重なって、ところてんの流れになる。

SBI証券と三井住友カードの組み合わせでクレジットカード積立に設定できるのは月10万円まで。月30万円すべてがカード決済になるわけではない。たとえばつみたて投資枠の月10万円をカード、成長投資枠の月20万円を別の買付で続ける。カード決済分には、カードの条件に応じたポイントが付く。

売却代金でカードの請求と残りの買付を賄えば、その間の収入から月30万円を出す必要は薄くなる。手元に残った収入をどう使うかは別の判断だ。売却したから資産が増えたのではない。保有資産の一部を現金へ替え、今後の入金を支える資金の出どころを変えている。

ここで売却代金を使わず、収入から月30万円を払い続けることもできる。その場合、現金プールは手元に残る。私が選べるのは、積立の金額だけではなく、現金をどこに置き、いつ使うかでもある。

枠が空く年、効いてくる年

方眼紙の上に、低い・中くらい・高い三つの積み重ね

2027年の買付額は増えない

2026年中に売り、売った商品の簿価が年末の保有残高から外れていれば、再利用できるのは翌2027年からだ。ただし、2027年は売らなくても月30万円を12か月、合計360万円買える。売却によって、その年の買付額が720万円になるわけではない。

では約262万円の空きはいつ効くのか。売らない場合、もともとの生涯枠は2029年1月に埋まる。売却で空いた分が残っていれば、そこから先も月々の買付を置ける。売却代金を2027年の積立原資に使い、簿価の復活は2029年以降の余地として効く。現金を使う時期と、生涯枠の空きが効く時期はずれる。

成長投資枠から時価360万円を売り、月20万円と月10万円の買付を変えずに続ける試算では、満額で月30万円を置ける最後は2029年9月となる。売らない場合の2028年12月から九か月後ろへ動く。2029年10月には端数を買い、生涯枠に再び達する。これは基準価額を2026年10月6日の評価比率に固定し、途中でほかの売買をしない計算だ。

成長とつみたては同じ容器の中で別の枠

総枠1,800万円の中に、成長投資枠の上限1,200万円がある。私の月30万円は、成長20万円とつみたて10万円。成長投資枠の保有分を売れば、総枠と成長の内枠の両方が空く。つみたて投資枠だけを売っても、成長の内枠は空かない。

同じ時価360万円を売るとして、売る口によって続けられる買付の形が変わる。下の月は、売却した簿価が2026年末までに保有残高から外れ、翌年以降も月20万円と月10万円で買う、という同じ条件で比べたものだ。

売る口翌年に戻る簿価の概算月30万円を満額で置ける最終月その後
売らない0円2028年12月2029年1月に約20万円で総枠に達する
成長投資枠から時価360万円約262万円2029年9月10月に端数を置く
つみたて投資枠から時価360万円約265万円2028年12月成長枠が尽きたあと、つみたての月10万円が続く
成長240万円・つみたて120万円合計約263万円2029年9月10月に端数を置く

つみたて投資枠だけの売却にも、現金化と総枠の再利用という意味はある。ただし、この月20万円と月10万円の配分で月30万円を満額で続ける目的には、成長の内枠も空ける必要がある。時価を2対1で売る方法は現在の買付比率に似ているが、制度が要求する黄金比ではない。成長だけから売っても、この試算では月30万円の最終月は同じになる。

表は売る口を指定するためのものではない。私にとっては、現金をどれだけ手元へ出したいかと、将来どの枠で買い続けたいかを、同時に考えるための地図である。

取り出す自由と、持ち続ける時間

コインの入った瓶、空の瓶、同じコインの入った瓶

売った後の値動き

NISAの中に置いたままでも、含み益は非課税で育つ。一部を売れば、元本と利益を含む現金を今使える。売った口数は、その後の値動きから離れる。

同じ指数を毎月買い直しても、売らずに持ち続けた場合と同じ口数に戻るとは限らない。売却後に基準価額が上がれば、手元の現金で買える口数は減る。その差は、買い終えた後にも残り得る。下がれば、反対に多く買える。価格がどちらへ動くかは、いまの画面からは分からない。

ポイントも、この値動きを消すほどの利益として見積もるものではない。カード積立を続ければ、条件に応じたポイントは積み上がる。ただし、売らずに同じカード積立を続けても、その期間のポイントは付く。売却に固有なのは現金を作ることと簿価の枠を翌年に空けることであり、ポイントは継続する買付に付随する。

売却代金を12か月に分けて買うことは、買付時点を分散する。一方で、それまで市場に置いていた資金の一部を一度外へ出す。両方を一つの動きとして引き受ける。ここを隠して「ドルコスト平均法だから有利」とは言えない。

現金を持つ理由

現金を手元に置くと、予定外の支払いに対応できる。翌月の買付代金にもできる。相場が大きく下がったときには、買う時期を自分で選べる。資産を必要な場面で使えることも、運用の成果だ。

時価360万円を売り、その全額を2027年の月30万円の買付に使えば、プールは12か月で空になる。その間に使わずに済んだ収入は別の場所に残る。2028年以降も同じ月30万円を続けるには、その時点の収入や別の現金が必要だ。どれだけを使い、どれだけを再びNISAへ入れるか。蓄えた資産の使い道を、時間をかけて選んでいく。

いつ押すか

12月31日のカレンダーと、開いた台帳

戻るのは翌年以降

売った年の年間枠は増えない。2026年に売却しても、その年の10月から12月に追加で買える額は変わらない。国税庁の金融商品取引業者向けQ&Aが示す基準日は、各年の12月31日。翌年の基準額は、その日に保有している商品の購入の代価を基にする。

2027年に枠を再利用する前提なら、売った口の簿価が2026年12月31日の残高から外れている必要がある。2029年1月より先へ月30万円を置くためには、遅くとも2028年末の残高から外れ、2029年に空きができている必要がある。

投資信託は、注文した日、約定した日、受渡が終わる日が一致しない。年末ぎりぎりに操作して翌年の枠が使えると決めつけることはできない。実際の売却日を考えるときは、SBI証券の案内に従い、そのファンドの注文情報を確かめる。

2029年の満杯を待つかどうかが、売却時期を決める唯一の物差しではない。いま使える現金をどれほど持ちたいか。今後も月30万円を買い続ける資金をどう用意するか。翌年からどの簿価の枠が空くか。それらを合わせて、売る額と時期を決める。

おわりに

夕日の窓辺に、閉じたノートと白紙

10月6日に見た約357万円の含み益は、売らずに持っていても非課税である。一部を売れば、利益に税金がかからないまま、元本と合わせて今使える現金になる。NISAは、必要なときに開けられるお財布でもある。

NISAの容器は1,800万円のまま、成長投資枠の内側は1,200万円のまま。押し出した売却代金には元本と利益が含まれ、翌年に空くのは売った簿価の分だけ。年間360万円の上限も残る。この三つを数えたうえで、現金を次の月々の買付に流す。

売った分を持ち続けた場合と、現金にしてから買い直す場合では、値動きの受け方が変わる。だから、いくら取り出し、何に使い、いくら積み立て直すかを自分で決める。満額になる日を待つためだけに、いま使えるお金を容器の中に閉じ込めておく必要はない。ところてんを押し出し、使い、また入れる。その流れを、自分の暮らしに合わせて続けていく。

参考リンク

FAQ

売却代金の全額が翌年のNISA枠になりますか

なりません。手元には元本と利益を含む売却代金が入ります。翌年に再利用できる生涯枠は、売った商品の取得価額、つまり簿価の分です。年間の買付上限も合計360万円のままです。

現金を積立に回せば、売らずに保有した場合と同じになりますか

同じにはなりません。毎月定額で買う間、売った口数の一部は市場から離れます。値上がりすれば買い戻せる口数が減り、値下がりすれば増えます。現金を手元に置く利点と、この価格変動を一緒に考える必要があります。

月30万円すべてにカード積立のポイントが付きますか

SBI証券と三井住友カードの積立は月10万円までです。ポイントの対象はカード決済分で、付与条件はカードによって異なります。月30万円すべてにポイントが付くという計算にはしていません。

つみたて投資枠だけ売っても、月30万円を続けられますか

成長投資枠の1,200万円の空きは増えません。私の成長20万円、つみたて10万円という買付では、成長の内枠が尽きると月30万円を満額で続けられなくなります。一方、つみたて投資枠だけの売却でも、総枠は簿価分だけ翌年に空き、つみたての買付を続ける余地はできます。