クレカ修行、最終ステージへ──Olive Infiniteに解脱を見る

はじめに:長い修行の果てに、ゴールが見えてきた

朝陽の差すデスクに立つOlive Infiniteカードと、口座残高を映すアプリ

楽天カードでポイントというものを覚えた頃から、ずいぶん遠くまで来た。マイル、メタルカードへの憧れ、ステータス、ホテル——そのときどきの「最良の一枚」を追って、握っては手放し、また握り直す。いつしか早幾年、私はずっとクレジットカードの修行を続けてきた。その長い道のりが、いまOlive Infiniteで一区切りを迎えようとしている。

その最新の一章が、5か月前の名古屋だった。私はヒルトン名古屋に泊まって「ダイヤモンドを続ける」と書いた。台北に似た街並みに高揚して、年300万円の決済を続ける意味を、そこで見つけた、と。

あれは本心だった。ただし、本心の全部ではなかった。

あの記事には書かなかった引っかかりが、実はいくつもあった。書けば結論が濁ると思って外した本音だ。今日はそれを先に並べる。そして、5か月前の自分の結論を裏返す。プライマリカードを、ヒルトンアメックスからOlive Infiniteへ寄せ切る——その検討に、本気で入った。手始めに、3か月で100万円を使ってみる。

修行から降りる、と言ってもいい。ただしそれは、力尽きての撤退ではない。長い道のりの果てに、ようやくゴールの輪郭が見えてきた——そういう降りどきだ。

書かなかった本音──「修行」はいつから固定費になったのか

陽光あふれる高級ホテルのラウンジ、誰もいないまま

「ステータスの含み損」という見方

ホテルステータスの維持は、株式のポジションに似ている。維持コストは固定で出ていくが、そこから得られる便益は変動する。便益が維持コストを上回っている間は「含み益」だが、下回り始めた瞬間に「含み損」に転じる。私はこれをステータスの含み損と呼んでいる。

名古屋の記事を書いたあと、自分の持ち高を冷静に見直すと、含み損の兆候がいくつも出ていた。

  • 年300万円を狙っても、きれいには止められない。気づけば毎年400万〜500万円まで膨らみ、超過分を別カードに振り分ける——その管理が単純に面倒だった。決済のたびに頭の片隅でカウンターを回す作業は、思っているより認知コストが高い。
  • 子どものライフステージが変わり、進学・部活動・交友関係の都合で、以前のように週末をホテルに充てられなくなった。宿泊の自由度は、こちらの都合だけでは決まらない。
  • 東京圏を離れると、気軽に行けるヒルトン系列が少ない。来たるべき老後に、夫婦でヒルトンに泊まって過ごす——という像が、正直うまく結べない。
  • 宿泊そのものが減ると、ラウンジ利用も減る。ダイヤモンドの目玉であるエグゼクティブラウンジは、使ってこそ価値が出る。回数あたりの便益、つまり限界効用が逓減してきた。
  • 無料・優待の設計はおおむね「2名まで」。3人目以降の朝食、スイートではない部屋との差額、駐車場代は実費で乗ってくる。家族構成によっては、額面の特典がそのまま手取りにはならない。

2泊目特典の、妙味が薄れた

これらが積み重なった先に、最後の引っかかりがある。年300万円を払って2泊目の無料宿泊特典を獲りにいく——その妙味が、薄れてきた。2泊目特典の実効還元率は「追加100万円に対して3〜5%相当」と以前に計算したが、これは「その2泊を実際に高単価ホテルで使い切れる」前提の数字だ。宿泊回数そのものが減れば、分母は変わらないのに分子(使い切れた特典の価値)が縮む。実効還元率は静かに下がっていく。

含み損は、放っておくと膨らむ。どこかで損切りの判断が要る。

そこへ、Olive Infinite(2026年5月26日)

明るいスタジオ光で映えるOlive Infiniteの券面とオリーブの葉

タイミングよく、というべきか。三井住友銀行・三井住友カードが、Oliveの最上位ランク「Olive Infinite」を2026年5月26日に提供開始した

中身を一次情報で整理しておく。

注目すべきは構造だ。Olive Infiniteは単体のクレジットカードではない。銀行口座の残高、SBI証券の残高、カードの利用額をセットで評価する、エコシステムの最上位という設計になっている。

項目内容
提供開始2026年5月26日
カード名Oliveフレキシブルペイ Visa Infinite
年会費本会員 99,000円(税込)/家族会員 無料
※Olive資産運用サービスの利用と残高条件(円普通預金500万円以上かつSBI証券500万円以上、合計5,000万円以上)の達成で年会費無料
カードブランドVisaの最上位「Visa Infinite」を搭載(コンシェルジュ、プライオリティ・パス等)
クレカ積立三井住友カードつみたて投資のポイント付与率(通常最大4%)に、条件達成で最大2%上乗せ
※通常最大4%はベース1%+年間カード利用額に応じた特典(300万円:+1%/500万円:+2%/700万円:+3%)。これに資産運用特典最大2%を加えて最大6%(700万円利用時)。
銀行口座特典他行あて振込手数料 月10回まで無料、コンビニATM 月10回まで無料、本支店ATM 何回でも無料 ほか

※「Olive資産運用サービス」とは、SBIグループとSMBCグループが設立したOliveコンサルティングが提供する資産運用サービス。三井住友銀行アプリから申し込み、資産の見える化やポートフォリオ提案などを受けられる。上表の年会費無料化やクレカ積立の上乗せは、いずれもこのサービスへの申込が前提となる。なお、名前から「資産を預けて勝手に運用される」サービスを想像するかもしれないが、原則としてそうではない。基本的にはSBI証券での自分の売買が前提で、資産の見える化とアドバイザー相談が付く“可視化・相談サービス”だ。運用を一任するファンドラップとは別物で、ラップのような運用報酬もかからない。預けて任せるのではなく、自分で運用したまま条件に充てられる——という理解でいい。

ゴールドに落とした翌週、最上位を「試しに」申し込んだ

スマホのアプリに表示された審査完了の画面と、現れる新しいカード

順序がおかしいことは、自分でも分かっている。つい1週間前、私はOliveプラチナプリファードをゴールドに戻したばかりだった。「ナンバー3のカードに年会費は払えない」と書いた、その舌の根も乾かぬうちに、最上位のInfiniteに申し込んでいる。

ただ、軸は一貫している。私がずっと避けたかったのは、年会費の多寡そのものではない。その奥にある分割損——決済も資産も特典も、複数のカードに分散したまま、どれも中途半端に終わる損失のほうだ。プラチナプリファードを降りたのは、それが一本化の核になりきれず、抱えるほど分散を長引かせる札だったからだ。逆にInfiniteに申し込んだのは、決済も資産形成もステータスも一枚に束ね切れる器が、ここにあると見たからにほかならない。降りた翌週に最上位へ、という動きは、ブランドの序列を上り下りしているのではない。とはいえ、これを見通していたわけではまったくない。Infiniteの発表は完全な不意打ちで、知っていればゴールドへの降格などしなかった。順序がちぐはぐなのは、私の計画性ではなく、タイミングの偶然のせいだ。それでも、サイロ化したカード資産を選択と集中へ舵を切る——そのチャンスが不意に目の前に現れ、私はそれに飛び乗った。狙って引き当てた一手ではない。たまたま正しい方向に転んだ、その一本の線の上にある。

申し込んでみたら、可決された。そして提示された与信枠は、これまでとは桁が違った。思わず二度見した。最上位のカードブランドというのは、こういうところで素性が出る。

手続きは、同じ日のうちに一気に流れた。ランクの切替が完了し、クレジットモードの審査も通った。Vpassとおまとめログインサービスが自動で登録され、スマホのApple Payへの設定まで終わった。ついでにETCも三井住友カードのものを申し込んだ。気づけば、利用通知に表示される名義は、もう「Olive INF会員」に変わっている。新しいカードは1〜2週間で手元に届く。エコシステムに乗るというのは、こういう速さのことだ。

年会費の「出どころ」が変わる

右肩上がりの運用画面とOliveカード、資産が年会費を支える構図

ここが今回の判断の核心だ。

ホテル利用が減れば、年会費の正当化は崩れる

ヒルトンアメックスの年会費66,000円を、私はずっと「ホテルで使い倒す前提」で正当化してきた。朝食、ラウンジ、アップグレード、無料宿泊特典——それらを年に何泊分も回収できるからこそ、年会費に意味があった。逆に言えば、ホテル利用が減れば、その正当化は根元から崩れる。修行から降りるという判断は、年会費の根拠そのものを失わせる。

資産運用残高が、年会費を肩代わりする

一方、Olive Infiniteの年会費の出どころは「ホテル利用」ではない。資産運用残高に連動している。これは私の生活と、もともと噛み合っている。投資はやめないし、SBI証券もクレカ積立も続ける。ホテルに行こうが行くまいが回り続ける部分で、年会費が相殺される設計だ。条件を満たせば、実質0円で最上位のカードブランドを握れる。

「年会費無料であれば」という一点で見たとき、Infiniteは私の家計に対して筋が通る。だからこそ、本格的に一本化を検討する段階に入った。

「無料化」の条件と、500万円の正体

ここで一つ、混同してはいけない落とし穴がある。Olive Infiniteの「年会費無料」は、Goldでおなじみの「年間100万円利用で翌年以降無料」とは別物だ。Infiniteの無料化は、まず資産運用サービスの残高条件を満たすことで成立する。条件は具体的だ。三井住友銀行の円普通預金残高が500万円以上、SBI証券残高が500万円以上、かつ両者の合計が5,000万円以上——この三つを同時に満たして初めて、99,000円の年会費が無料になる。利用額ではなく、預け入れの規模で決まる。土俵が「使う」から「預ける」に変わる。ここを取り違えると、設計ごと読み違える。

5,000万円という数字だけ見ると身構えるが、その合計判定にはSBI証券の残高が算入される。すでに市場で運用している資産を、運用したまま条件に充てられるということだ。寝かせる必要はない。新たに固定的に置くことになるのは、円普通預金500万円の枠のほうだ。

そして、この500万円を、私はコストと見ていない。かねて自分のポートフォリオは現金比率が低いのが、ずっと気になっていた。500万円を普通預金で動かさず持つことは、いずれ作るべきだった現金クッションを、年会費無料という口実で前倒しするだけだ。運用資産は運用のまま、現金は欲しかった厚みのまま。増分の機会コストは、その現金分のわずかな利回り差にとどまる。死に金ではなく、欲しかったポジションだ。

プライマリを寄せ切る──「決済導線」をもう一度引き直す

サブスク一覧の支払いカードをOliveに切り替えるエクセル作業

やることの構造は、実はヒルアメ時代と同じだ。以前、ヒルトンアメックスに決済を寄せ切るために「決済導線」を総点検した。Amazonの定期おトク便、各種サブスク、PayPal、2拠点分のインフラ固定費——支払い元のありかは、あのとき洗い出してエクセルで一覧にしてある。だから今回は、見えないものを掘り起こす作業ではない。その一覧を上から順に、オンラインで支払いカードを切り替えていくだけだ。前回が手探りの発掘なら、今回は地図を見ながらの付け替えにすぎない。

今回は、その終点を差し替えるだけでいい。寄せ先がヒルトンアメックスからOlive Infiniteに変わる。配管はもう敷いてある。蛇口の向きを変える。

寄せ切る対象は前回と同じく、固定費(2拠点のインフラ、サブスク、定期便)から始め、変動費(日常消費、家族のライフイベント)へ広げる。クレカ積立も含めれば、Olive Infiniteは「決済」と「資産形成」の両方を一枚で束ねる中心になる。エコシステムの最上位というのは、こういう寄せ方をしたときに初めて意味を持つ。

まずは100万円──入会特典は「獲れるなら獲る」に置く

明るいカフェでOliveカードのタッチ決済、入会特典への助走

一本化の初動は、入会キャンペーンに合わせたい。Olive Infiniteの新規入会&ご利用特典は、入会月の3か月後末までに100万円以上の利用で10万ポイント。2026年5月の入会に限り、集計期間は入会月の4か月後末まで延びる。月あたり25万円前後のペースで届く射程だ。

ただし、ここに私のケース特有の落とし穴がある。同じページの注記に「初年度年会費無料で入会した人は、この特典の対象とならない」とある。私の年会費無料は資産運用残高連動の優遇で得ているが、それが「初年度年会費無料での入会」と同一視されるかどうかは、公式の文面だけでは断定できない。もし同一視されるなら、無料で持てることと引き換えに、10万ポイントの入会特典は獲れない——という二律背反になる。

捻れはもう一つある。私はゴールドからのランク切替でInfiniteに上がった。ランク切替が「新規入会」として扱われるかは別問題で、注記には切替で達成状況がリセットされる旨もある。新規入会特典の土俵に乗れるのかどうか、ここは契約日と年会費の扱いを確定させてから判断する。

計算上の注意も置いておく。100万円の集計には、クレカ積立(SBI証券)、国民年金保険料、各種電子マネーチャージは乗らない。決済導線を寄せ切るとき、ここを取り違えると計画が狂う。

結論として、入会特典は「獲れるなら獲る」程度に置く。本筋はあくまでプライマリの一本化であって、10万ポイントはおまけだ。獲れない判定が出ても、一本化の判断そのものは揺るがない。

どこまで使うか──決済ラインの三段設計

100万・400万・700万の三段のうち、400万に置かれたカード

一本化したあと、年にいくら寄せるか。ここに、修行から降りた判断がそのまま表れる。私は決済ラインを三段で設計している。

維持ライン:年100万円は意識せず通過する

まず維持ライン。年会費無料を2年目以降も保つには、残高条件に加えて年間100万円のカード利用が要る。だが、これは楽勝だ。年300万円を狙ってもいつも400万〜500万円まで使ってしまっていた人間からすれば、100万円は意識せず通過する。プライマリを寄せ切れば、固定費だけで届く。

快適ライン:年400万円で、約15万ポイント

次に快適ラインOlive Infiniteの継続特典は、前年の利用額に応じて二段階になっている。年400万円で4万ポイント、年700万円で11万ポイントだ。私が狙うのは下の段、400万円で4万ポイントのほうだ。旧ヒルトン時代とほぼ同じ決済水準だが、追い込みの白さがない。生活の自然な決済が、そのまま乗る範囲に収まる。

では、その快適ラインで1年にどれだけ貯まるのか。Olive Infiniteのポイントは、大きく三つの源泉から積み上がる。継続特典、通常決済の還元、そしてクレカ積立だ。年400万円を決済し、投信積立を上限の月10万円(年120万円)で回した場合、1ポイント=1円換算で次のようになる。

ポイント源泉年400万円決済(参考)年700万円決済
継続特典40,000pt110,000pt
通常決済の還元(決済額×1%)40,000pt70,000pt
クレカ積立(年120万円×最大6%)72,000pt72,000pt
年間合計約152,000pt約252,000pt

年400万円の決済と積立だけで、年に約15万ポイント——15万円相当が戻る。ただし、これを「400万円に対する3.8%還元」と読むのは正しくない。合計は、二つの別々の土俵から成っているからだ。一般決済への還元は、継続特典を含めても実効2%ほど(80,000pt÷400万円)。残りを押し上げているのは、決済とは別建てのクレカ積立だ。これは決済額のカウントとは独立した別枠で、投資を続けているだけで最大6%(72,000pt÷120万円)が乗る。しかも積立は投資元本が手元に残るので、この6%は実質ノーリスクの上乗せに近い。Infiniteがただのクレジットカードではなく「決済と資産形成を束ねるエコシステム」だと言われるゆえんは、この一枠に凝縮されている。

修行ライン:あえて追わない年700万円

そして、あえて追わない修行ライン。700万円なら継続特典が11万ポイント。400万円から積み増すと、継続特典の差7万と通常還元の差3万、あわせて約10万ポイント増える。追加の300万円決済に対して、実効3.3%だ。

ここは正直に書く。3.3%は、率として相当に高い。世のクレジットカードの多くが1%前後で競っていることを思えば、本来なら迷わず取りにいく数字だ。だから私は「割に合わないからやめる」とは言わない。割には、合う。

それでも追わない。理由は還元率ではなく、義務感のほうだ。年700万円を目標に置いた瞬間、決済はまた「ノルマ」に変わる。カウンターを睨み、年末に帳尻を合わせて散財する——ヒルトンで降りたばかりの、あの生活に逆戻りする。降りるとは、有利な数字でも最大化しないと決めることだ。最後の3.3%を取りにいかない自由のために、その10万ポイントは惜しまず手放す。

400万円で止める。700万円は追わない。この一線こそが、私にとっての「修行から降りる」の実装だ。降りるとは、最上位を持たないことではない。最上位を持ったうえで、てっぺんを追わないと決めることだ。

それでも、ヒルトンを「解約」はしない

明るい自宅リビング、守りを残す、テーブルに置かれた一枚のカード

念のため言い添えておくと、これはヒルトンアメックスの解約宣言ではない。降りるのはあくまでステータスと修行であって、カードそのものの話とは切り分けている。

やめるのは「年300万円を払って2泊目を追いにいく」追い込みと、もう中身が空洞化したダイヤモンドのほうだ。ラウンジもプールも使わなくなったいま、ステータスの大半はすでに価値を失っている。ここは迷いなく手放す。手元に残る無料宿泊特典だけは、期限までに使い切ってから移行する。

ただし、カードを即解約はしない。ダウングレードして、薄く持ち続ける。理由はヒルトンではない。私はすでに新規募集を終えた付帯サービス——家財総合プロテクション——に加入している。新規ではもう入れないが、いったん加入していれば、年会費の安い下位カードにダウングレードしても継続できる。完全に解約しさえしなければ守れる、再取得不能な枠だ。逓減していくステータスと、失効すると復活しない保険は、まったく別のレイヤーの話だ。前者は降りる。後者は、下位カードに乗り換えて温存する。「降りる」と「残す」は、こうして両立する。

そして、これは万人向けの結論ではない。年に何泊もする人、生活圏が都市部中心でヒルトン系列にアクセスしやすい人にとっては、修行を続ける合理性はまだ十分に残っている。問題はカードの優劣ではなく、便益と維持コストの個人ごとの収支だ。私のケースでは、収支が逆転した。だから降りる。

おわりに:長い修行の果てに、解脱が見えてきた

昼の光に満ちたデスクのOliveカードと、澄んだ地平線

名古屋の話は、振り返ればごく最近の一章にすぎない。本当の出発点は、もっと前にある。

楽天カード——ポイントというものを初めて意識し、Edyで電子マネーの便利さを知った、すべての入り口だった。次にANA VISAワイドゴールドでマイルを貯め、旅にほんの少し上等な気分を持ち込むことを覚えた。メタルカードの輝きに惹かれてアメックス・プラチナを握ったが、特典は一つひとつ大仰なわりに響かず、降りた。同じくメタルに目がくらんでラグジュアリーカードに手を出し、その実体がアプラスカードと変わらないと悟り離れた。ヒルトン・プラチナは気に入っていたのに、カードそのものが終わってヒルトンアメックスプレミアムへ移った。SPGアメックスも好きだったが、マリオットボンヴォイ・アメックスへと姿を変え、改悪も重なった。ヒルトンかマリオットかの二択を迫られ、私はヒルトンを選んだ。そして今、ヒルトンアメックスプレミアムが手元にある。

ポイント、マイル、メタルへの憧れ、ステータス、ホテル——そのときどきの最適解を追い、握っては手放しを繰り返してきた。一枚ごとに小さな修行があり、小さな見切りがあった。脈絡のないカード遍歴に見えて、いま振り返ると、それは一点へ向かう無自覚な収束だった。

その一点が、不意に像を結んだ。Olive Infiniteだ。ポイントの原点も、マイルで覚えた上質さも、メタルへの憧れも、ステータスとホテルも——別々に追ってきたものが、決済と資産形成を一枚に束ねる最上位へ、吸い込まれていく。長く探していたゴールは、新しく現れたのではない。ずっと歩いてきた道の、その先で待っていた。

ただ、まだ着いてはいない。一本化はこれからで、私は最終ステージの入り口に立っているにすぎない。それでも、長く歩いてきた者にだけ、終わりの輪郭は見える。解脱とは、修行をなかったことにすることではない。すべての修行を経たうえで、もう追わなくていいと悟ることだ。

だから、修行から降りることは撤退ではない。リソースの再配分だ。ホテルに注いでいた年400万〜500万円の集約先を、資産運用と連動するエコシステムへ移す。年会費の出どころを、変動する便益から、回り続ける残高へ。

台北に似た名古屋の地下街は、無料宿泊特典が残っている間に、もう一度くらいは歩くだろう。ただ、その先の決済導線は、もうヒルトンには向いていない。長い修行の、いちばん外側の出口が、ようやく見えてきた。


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