
「含み益は幻」。投資の世界で耳にタコができるほど聞かされる言葉だが、これほど重く響く局面もなかった。
私のポートフォリオはここ数年、エヌビディア(NVDA)の爆発的な上昇により、評価額が膨張し続けていた。取得単価はわずか数ドル。それが100ドル、140ドルと駆け上がるにつれ、資産は倍々ゲームで増えていった。
しかし、今や米国株ポートフォリオの大部分がNVDA、加えてその他数社の半導体銘柄で埋め尽くされている。NVDAがくしゃみをすれば、私の資産は数百万円単位で風邪をひく。日々の変動額が、サラリーマンの年収レベルで乱高下する。
これは健全ではない。悩み抜いた挙句に達した結論は、「売りボタン」を押すことでした。
半導体相場の過熱と「セクターローテーション」の必要性
2024年から2025年にかけてのAIブームは凄まじいものがある。市場関係者の間でも「AIはまだ初期段階」という強気論と、「さすがに期待先行で買われすぎだ」という慎重論が拮抗している状況だ。
特に半導体セクターはボラティリティ(価格変動)が極めて高い。米国の著名投資メディアでも、特定のハイテク株に集中投資することのリスク警鐘や、セクターローテーション(資金の循環)の重要性が説かれている。

歴史を振り返っても、永遠に上がり続ける木はない。ドットコムバブル然り、特定のセクターへの「全振り」はいずれ破綻するリスクを孕む。資産規模が大きくなった今こそ、攻めから守りへシフトすべきタイミングだと判断した。
【実践】数千万円規模の「大手術」を敢行
今回私が実行したのは、ポートフォリオの大胆な組み換え(リバランス)だ。
売却したもの
まず、保有していたNVDAの大半を売却した。完全に手放したわけではないが、「主役」の座からは降りてもらった形だ。
さらに、NVDA以上に値動きが激しく、将来の不透明感が拭えなかったその他の「攻めの半導体銘柄」については、全株を売却した。
これにより、手元には数千万円規模の米ドル(キャッシュ)が残った。税金として相当な額(高級車が買えるレベル)を持っていかれるが、それは「利益を確定させたコスト」として割り切ることにした。
購入したもの
虎の子のキャッシュを遊ばせておくわけにはいかない。私は即座に他の銘柄へ資金を振り分けた。(具体的な銘柄は続編の記事に書いた。)
この決断の「是」と「非」
実際にこの大手術を行ってみて、感じているメリットとデメリットを正直に書いておく。
メリット:圧倒的な「心の平穏」
最大の収穫はこれに尽きる。以前は、夜中にふと目が覚めるとスマホでNVDAの株価をチェックし、プレマーケットの動きに一喜一憂していた。それが今はどうだ。安定銘柄が何とかしてくれる。この安心感は絶大だ。個別株が多少暴れても、資産の土台(コア)が盤石なら、米国経済全体が死なない限り私の資産も死なない。
また、セクターを分散させたことで、テック株が総崩れした日でも、資産全体へのダメージは軽微で済むようになった(はずだ)。
デメリット:税金と「もしも」の欲
当然、デメリットもある。まず税金だ。利益確定をした瞬間に約20%の税金が発生する。売らずに持ち続けるのが正解という考え方もある。
そして「もしNVDAがここからさらに2倍になったら」という妄想が完全に消えたわけではない。「あのまま持っていれば資産は〇億円だったのに」と後悔する日は来るかもしれない。
それでも「現金化」を選んだ理由
しかし、画面上の数字が増えたり減ったりするだけの「含み益」は、結局のところ絵に描いた餅でしかない。
今回、数千万円を一度「現金」に戻し、それを自分の意志で「より堅牢な資産」に換えたことで、初めてこの資産が「あぶく銭」から「本当の財産」になった感覚がある。
結論:夜ぐっすり眠るための「最強の要塞」完成
結論として、今回のリバランスは大正解だったと確信している。
現在のポートフォリオは、最強銘柄が脇を固める布陣だ。サッカーで言えば、全員攻撃の特攻チームから、鉄壁の守備と確実な得点力を持つ優勝候補チームに生まれ変わった。
投資の目的は、スリルを味わうことではなく、資産を確実に増やすことだ。エヌビディア全振りは、夢はあるが寿命が縮む。夢よりも「確実な未来」と「安眠」を選んだ。
もし今、特定の銘柄だけで資産が膨れ上がり、いつ利確すべきか震えている人がいるなら、伝えたい。「利確は正義だ」。