先日、私の米国株ポートフォリオにおいて、長らくエースとして君臨していたNVIDIA(NVDA)の保有分の75%を売却しました。
投資の世界において、「利を伸ばせ(Let profits run)」という格言はあまりにも有名です。しかし、実際に目の前で資産が膨れ上がり、ポートフォリオのバランスがいびつになるほどの成功を手にしたとき、私たちは「いつ利益を確定させるか」という、より高度な判断を迫られます。
購入時から株価は20倍を超え、含み益は+1,500%以上。財務状況は盤石、AI需要も天井知らず。本来であれば売る理由はどこにもありません。それでも今回、あえて「勝ち馬」から降り、その資金を新たな銘柄へと配分する決断を下しました。
本記事では、このリバランスに至った「地政学的な懸念」と「次なる成長戦略」について、私の率直な思考プロセスを共有します。

NVIDIA売却の決断:見過ごせなくなった「地政学リスク」
NVIDIAのファンダメンタルズに疑いの余地はありません。しかし、企業の成長力とは別の次元で、無視できないリスクファクターが肥大化していると感じています。それが台湾有事のリスクです。
ご存知の通り、NVIDIAのGPU製造はTSMC(台湾積体電路製造)に深く依存しています。昨今の国際情勢、特に米中関係の緊張と台湾海峡を取り巻く不確実性は、私たちのような長期投資家にとって、もはや「ブラックスワン(起きる可能性は低いが壊滅的な事象)」として片付けられるレベルではなくなりつつあります。
ポートフォリオにおけるNVDAの比率が極端に高まった今、もし台湾有事が現実となれば、私の資産全体が致命的なダメージを受けます。この「集中リスク」を解消し、ポートフォリオを最適化すること。これが、今回利益確定に踏み切った最大の理由です。

売却益の行方:新たに迎え入れた4つの銘柄
NVIDIA売却で得たキャッシュは遊ばせておくわけにはいきません。即座に以下の4銘柄へ再投資を行いました。選定基準は「次のAIフェーズ」と「ディフェンシブな成長」です。
| 銘柄 | 選定理由・狙い |
| Alphabet (GOOGL) | Geminiの台頭と、対OpenAI, Microsoft, TSMC, NVIDIA連合への対抗馬 |
| Broadcom (AVGO) | AIノードを繋ぐ「通信」の重要性増大 |
| Eli Lilly (LLY) | 経口肥満薬によるバイオ・グロース枠 |
| Vanguard S&P 500 (VOO) | ポートフォリオの土台強化 |
1. Alphabet (GOOGL):Geminiの実力と復権への賭け
ここ最近、実際に各社のLLM(大規模言語モデル)を使い比べている中で、潮目の変化を肌で感じています。かつて一世を風靡したChatGPTですが、最近は停滞感も否めません。一方で、GoogleのGeminiの進化速度と、Google Workspaceとの統合による実用性の向上は目を見張るものがあります。
市場は長らく「Microsoft(OpenAI)× NVIDIA」の連合軍、いわゆるTSM-NVDA陣営を評価してきましたが、この一極集中にはリスクがあります。Gemini 2.0などのアップデートを見るに、Googleの巻き返しは本物であり、かつ傘下のWaymoの勢いを見ると、現在の株価水準はまだ過小評価されていると判断しました。

2. Broadcom (AVGO):AIインフラの隠れた主役
AIの計算能力競争は、単体のチップ性能から「いかに効率よく接続するか」というネットワークの戦いにシフトしています。スケーラブルなAIクラスターを構築するためには、AVGOが提供するネットワークチップやカスタムシリコンが不可欠です。
NVIDIA一強のGPU市場とは異なり、通信インフラはより広範な需要を取り込めるセクターです。実直な経営手腕と高い収益性も、長期保有にふさわしいと判断しました。

3. Eli Lilly (LLY):ヘルスケア・イノベーションの波に乗る
テック株偏重のリスクをヘッジしつつ、高い成長率を取り込むために選んだのがイーライリリーです。
注目しているのは、来年にも市販が見込まれる経口(飲み薬)タイプの肥満症治療薬です。現在の注射タイプ(ゼップバウンド、マンジャロ等)でも驚異的な売上を記録していますが、「飲むだけ」となれば市場の裾野は桁違いに広がります。これは単なる製薬企業の枠を超えた、ライフスタイルを変えるグロース株としての投資です。

4. Vanguard S&P 500 ETF (VOO):結局は「王道」へ
そして最後に、資金の多くをVOOへ。個別株投資は楽しいものですが、資産形成のコアはS&P500であるべきという原点に立ち返りました。盤石な基盤があるからこそ、サテライトで攻めた投資ができるのです。

既存ポートフォリオの現状と所感
今回のリバランスにより、私のポートフォリオはより分散が効いた形になりましたが、既存の主要銘柄も引き続きホールドしています。
- Amazon (AMZN):AWSの安定感と物流網の支配力は健在。テック株のディフェンシブ。
- Apple (AAPL):爆発力はないものの、自社株買いとエコシステムの囲い込みによる安心感。ある意味、ディフェンシブ。
- Netflix (NFLX):ストリーミング戦争の勝者として、利益体質への転換を評価。
- Tesla (TSLA):ボラティリティは高いですが、EVのみならずロボティクスへの期待枠として。
- Uber (UBER):黒字定着とプラットフォームとしての完成度により、完全に「買い」から「保有」フェーズへ。
具体的な保有株数や評価額こそ伏せますが、おかげさまで全体としてのパフォーマンスは市場平均を上回る水準で推移しています。特にUberやTeslaなどの回復・成長が、ポートフォリオ全体の底上げに寄与しています。

まとめ:攻めるための「撤退」という選択
+1,500%を超える銘柄を売るというのは、心理的な抵抗感が凄まじいものがあります。「もっと上がるかもしれない」という欲との戦いです。そのために、リバランスの意思決定が遅れたことは否めません。
しかし、企業経営と同じく、投資においても「生存し続けること」が最優先事項です。台湾有事やChatGPT斜陽化というアンコントロールなリスクに対し、キャッシュ化というコントロール可能な手段で対抗する。そして、Geminiや経口肥満薬といった、次の時代を作るイノベーションへ資金を還流させる。
今回のリバランスは、単なる利益確定ではなく、次の10年を戦うための布陣の再構築です。皆さんのポートフォリオも、一度「リスクの所在」という観点から点検してみてはいかがでしょうか。
参考リンク:
Google
Broadcom Investor Relations
Eli Lilly and Company Investors