10年目のさようなら、和食さと|SRS株売却

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SRSホールディングス(8163)の株を売った。保有期間はおよそ10年。売却株数は1,000株。長年の”株仲間”との別れは、思ったより感慨深かった。

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はじめに:10年越しの「さよなら」

SRSホールディングス(和食さと)の株式情報の概要

長期保有していたSRSホールディングス(証券コード:8163)の株を、ついに手放した。

買ったのは今から約10年前。当時は「和食さと」の優待目当てで購入した、いわゆる優待株だ。1,000株保有で年に4回、1枚500円の食事券が3枚ずつ届く——つまり年間6,000円分の優待券。それが毎年コンスタントに届いてきた。

売った理由はシンプルだ。近所の「和食さと」が閉店した。優待券が使えなくなった。だから売った。

優待株ホルダーとしては至極当然の行動原理である。キャピタルゲインがどうとか、株価がいくらになったとか、そういう話ではない。「優待券を使って家族でご飯を食べに行ける」——その一点にこの株の保有意義があった。その前提が崩れた以上、手放すのは自然なことだった。

突然の「さよなら」——近所の和食さとが閉店した

閉店したファミリーレストラン(イメージ)

その日は突然やってきた。

いつも通り優待券を持って近所の「和食さと」に向かったら——シャッターが下りていた。貼り紙一枚。「長年のご愛顧ありがとうございました」。

この店は、子供がまだ幼い頃から通っていた。親戚の集まりも、ちょっとしたお祝い事も、「とりあえず、さとにしよう」が我が家の合言葉だった。優待券がなくても、お金を払って行く店。そういう存在だった。

その店の明かりが消えている。そのショックが、そのまま売却の決断になった。

「まだ他の店舗もあるじゃないか」と思う人もいるだろう。確かにセカンドハウスのあるエリアにも店舗はある。だが、非日常のリラックスしに行った場所で、わざわざ普段使いのチェーン店に行くかというと、答えは「NO」だ。優待の価値は生活動線上にあってこそ。それを思い知った。

そもそも、なぜ優待株を10年も持っていたのか

株主優待食事券(イメージ)

日本株の投資スタンスは、基本的に優待株至上主義だ。

株価が上がったか下がったかは、正直なところ二の次。目先の優待券が届くこと、それを使って家族で外食すること。それが日本株を持つ最大の動機であり、10年間SRS株を手放さなかった理由もそこにある。

10年間で受け取った優待の累計は、単純計算で約24万円(12,000円×20回)。この24万円は「投資リターン」ではない。家族で食べた20回分の食事そのものだ。食卓を囲んだ回数、子供が成長していく過程で「今日はさとだね」と笑った回数。それが24万円の中身である。

ちなみに10年間の数字を振り返ると、売買益と配当金を合わせてトータル約48万円。当初は「44万円」と計算していたが、配当金累計の約4.1万円が抜けていた。記録として残しておく。

項目 金額
売買益 約20万円
配当金累計 約4.1万円
優待累計 24万円(12,000円 × 20回)
合計 約48万円
10年間の記録(優待24万円が最大の恩恵)

この表で一番大きい項目が「優待累計」であることが、まさに優待株ホルダーの実態を物語っている。売買益20万円は結果論でしかなく、保有中に株価を見て「よし、含み益が増えた」などと思ったことはほとんどない。

配当は「おまけ」だったが、それでも気になる推移

優待が主役なら、配当はせいぜい「おまけ」だ。しかし、この「おまけ」の推移を並べてみると、飲食株の不安定さが浮き彫りになる。

決算期 1株配当 1,000株配当額 備考
2016/3 5円 5,000円
2017/3 5円 5,000円
2018/3 5円 5,000円
2019/3 6円 6,000円
2020/3 0円 0円 コロナ禍で無配
2021/3 0円 0円 コロナ禍で無配
2022/3 5円 5,000円 復配
2023/3 0円 0円 再び無配
2024/3 7.5円 7,500円 増配
2025/3 7.5円 7,500円
合計 41円 41,000円
SRSホールディングスの配当推移(出所:IRBANK

10年間で3回の無配。コロナ禍の2020〜2021年、そして2023年3月期の赤字決算時。配当がゼロでも、優待券は届いていた。「あ、今年も無配か。まあ優待は届いたし」——それが当時の正直な感想だ。配当が不安定でも保有し続けられたのは、優待という現物が手元にあったから。逆に言えば、もし純粋な配当株として保有していたら、コロナ禍に損切りしていたかもしれない。

これこそが優待株の「接着剤」効果だ。優待は投資家を銘柄に繋ぎとめる力がある。それが良いことなのか悪いことなのかは、また別の話だが。

閉店は”敗北”ではなく”戦略的撤退”だった

関西圏の店舗戦略(イメージ)

優待が使えなくなって売った——それは個人の事情だ。では、企業としてはどうなのか。後から調べてみると、近所の店の閉店は単なる「撤退」ではなかった。

和食さとは2025年3月末時点で全国198店舗。そのうち関西が126店(64%)と、圧倒的な関西偏重だ。関東はわずかな数しかなく、エリア外に住む株主にとって優待はもともと使いにくい設計だった。

Shared Researchによれば、2023〜2024年にかけて不採算店の整理を実施。収益性の低い店舗を閉じて体質を強化する「スクラップ」フェーズだった。私の近所の店もその一つだったのだろう。

そして2025年、流れが変わった。不採算店整理が一段落したと見るや、今度は出店攻勢に転じている。OHKの報道によれば、岡山に19年ぶりに出店し、2025年度中に岡山で3店舗の出店を計画しているという。

さらに大きな絵がある。PR TIMESで発表された中期経営計画「SRS VISION 2030」では、2030年にグループ1,100店舗以上という目標を掲げている。2025年3月末のグループ店舗数は780店だから、5年で約40%増という野心的な計画だ。

つまり、私が「店が閉まった。もう優待使えない。売ろう」と判断した瞬間、企業としては次の成長に向けて静かに仕込みをしていたわけだ。しかし、それは企業の話であって、私の話ではない。私の投資基準は「優待券を使えるかどうか」なのだから。

SRSホールディングスの10年——数字で振り返る

財務データの振り返り(イメージ)

せっかくなので、保有した10年間の企業業績も記録として残しておく。

決算期 売上高 営業利益 当期純利益 和食さと店舗数
2016/3 401億 5.4億 0.06億
2017/3 434億 4.1億 ▲2.3億
2018/3 442億 7.4億 1.1億
2019/3 445億 10.2億 2.8億
2020/3 446億 1.9億 ▲24.9億
2021/3 437億 ▲38億 ▲40.7億
2022/3 429億 ▲46.4億 15.7億
2023/3 545億 ▲6.1億 ▲14.5億
2024/3 602億 21.6億 18億 約200
2025/3 675億 26.8億 198
SRSホールディングス 業績推移(出所:IRBANKShared Research

コロナ禍では営業利益が▲38億〜▲46億円と壊滅的な打撃を受け、2023年3月期まで3期連続の最終赤字。飲食業は固定費の塊だから、売上が落ちれば即座に赤字に転落する。

しかし2024年3月期に劇的なV字回復を遂げ、売上高は過去最高の675億円に達している。企業としては最も好調な時期に私は売ったことになる。

ただ、繰り返すが、それは関係ない。株価が上がっても優待券が使えないなら保有する意味がない。これが優待株ホルダーの論理だ。合理的ではないかもしれないが、一貫している。

SRS株保有のメリット・デメリット、正直に書く

メリットとデメリット(イメージ)

メリット

①優待が生活に溶け込む(生活圏内ならば)
年間12,000円の食事券は、金額としては地味だ。しかし「今日の夕飯、さとにしよう」と気軽に使えるのが良かった。投資リターンは数字に表れるが、「毎月の外食が優待券で賄える」という日常の恩恵は数字に表れない。これこそが優待投資の真骨頂である。

②メニューが多様で使いやすい
和食さとはファミレス形式なので、家族連れから一人客まで幅広く使える。寿司、天ぷら、鍋、麺類——老若男女が集まる場面で「ここなら全員が食べたいものを見つけられる」という安心感は大きかった。親戚の集まりで重宝したのはこの点だ。

③10年持つと、優待の累積効果が実感できる
10年で24万円。日々の食事として消費しているから「リターン」として意識することは少ないが、振り返ると「普段のご飯を食べていただけで24万円分得をしていた」ことになる。優待投資の醍醐味はこの体感にある。

デメリット

①立地依存度が極めて高い
SRSの店舗は関西偏重(64%が関西)。全国チェーンのすかいらーくグループなどと違い、居住地によって優待の実質価値がまるで違う。関東住みで「和食さと? 近くにないけど……」という人は、この株を持つ意味がない。

②配当が不安定
上述の通り、10年で3回の無配。優待は毎年届くのに、配当はゼロ——この奇妙な体験は飲食優待株ならではだろう。優待だけ見て安心していると、配当の不安定さを見落としがちだ。

③閉店リスクが常にある
今回まさに体験したことだ。最寄り店舗が閉店した瞬間、優待券は「絵に描いた餅」になる。これはSRSに限らず、すべての飲食優待株に共通するリスクだが、地域密着型のSRSは特にこのリスクが高い。

優待株ホルダーとして学んだ3つのこと

学びと振り返り(イメージ)

10年間のSRS株保有を通じて、優待投資について考えさせられることが多かった。整理すると、3つに集約される。

①「額面利回り」と「生活圏利回り」は別物

優待株を選ぶとき、多くの人は「優待利回り」を計算する。だが、その優待が利用できる店が自宅から車で30分以上かかるなら、実質利回りはもっと低い。交通費、時間、使いきれずに期限切れになる券……。「使える優待」と「持っているだけの優待」の差は、利回り計算には現れない。

優待の価値は生活動線で決まる。これはSRS株を持ち続けた10年間の最大の実感だ。

②優待は「接着剤」になる——それは良いことか?

コロナ禍で無配、赤字決算——普通なら損切りを検討する場面だ。だが、優待券が届くたびに「まあ、食事券もらえてるし」と思ってしまう。優待は投資家を銘柄に繋ぎとめる強力な「接着剤」として機能する。

結果として10年間保有し続け、V字回復の恩恵を受けられたのだから、「接着剤」が功を奏したとも言える。しかし、企業がそのまま沈んでいたら——優待に引きずられて損失を拡大させていた可能性もある。優待の「接着剤」効果は、良くも悪くも働くことを覚えておきたい。

③売却のトリガーは「生活の変化」

優待株ホルダーにとって、売却のきっかけは業績やチャートではなく「生活の変化」だ。引っ越し、閉店、ライフスタイルの変化——優待が日常に溶け込んでいるぶん、日常が変わったときに投資の前提が崩れる。

今回の私がまさにそうだ。企業の業績は好調、株価も悪くない。しかし「近所の店がなくなった」という生活上の変化が売却を決定づけた。投資判断としては正しくないのかもしれない。だが、優待株を持つ理由が「使うため」であるならば、使えなくなった時点で手放すのは、むしろ筋が通っている。

まとめ:10年間、ごちそうさまでした

家族で和食さとに通った思い出のイメージ図

子供がまだ小さかった頃、家族で「さと」に通い始めた。お誕生日も、親戚の集まりも、なんでもない週末の夕飯も。子供が大きくなるにつれてメニューの選び方が変わり、取り分けていた料理をいつの間にか一人前ずつ頼むようになった。10年という時間は、そういう変化の積み重ねだ。和食さとは、我が家の食卓の延長にあった。

SRSホールディングスの経営は、今まさに上り調子だ。V字回復を果たし、売上高は過去最高。中期経営計画「SRS VISION 2030」では2030年にグループ1,100店舗を掲げ、岡山には19年ぶりに出店した。その勢いがさらに加速することを、一人の元株主として、そしていちファンとして願っている。

そしていつか、近所にまた「和食さと」が帰ってきてくれたら——そのときは迷わず株を買い直すだろう。ただし、次はできれば長くいてほしい。

ファミリーレストランは、その街に店を構えた時点で、地域の家族の日常に組み込まれる。子供の成長、家族の行事、何気ない団欒——そうした暮らしの一部を引き受けるという、間接的だが確かな責任を負っている。だからこそ、出店したからには簡単にいなくならないでほしい。それは経営効率とは別の次元の話だが、10年間通った一家族の、偽らざる本音だ。

なお、念のため書き添えておくと、「優待券乞食が経営を悪化させたのでは」という声もあるかもしれないが、常に全額優待券で「タダ喰い」していたわけではない。家族4人で行けば優待券だけで足りるはずもなく、毎回それなりの金額を自費で支払っていた。優待券はあくまで「きっかけ」であり、残りは普通に財布から出していた。その点は誤解なきよう。

和食さと、10年間ごちそうさまでした。

参考リンク集


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